妹尾昌俊アイデアノート

妹尾昌俊アイデアノート~ステキな学校、地域、そして人たち

元気な学校づくりと地域づくりのヒントをお届けします!

【忙しい学校 どうする?】指導要録、通知表も変えられないか?

なんでも簡略化すればよいという話ではないのけど、指導要録と通知表をなんとかできないか、もやもや考えている。
通知表は、みんなもらったことがあると思う。
指導要録というのは、通知表に似ているけれど、学校が保管する書類で、児童・生徒の氏名、住所、出席状況や健康状態、学習の状況・結果などを記したもの。
 
最近まで僕はちゃんと知らなかったのだが、指導要録は、学校教育法施行規則において、作成が義務付けられているので、なくすことは(法改正がない限り)できない。通知表は法的根拠は実はなにもないものなので、作成する、しない含めて自由、校長の裁量である。ただし、通知表だけやめたとしても、どうせ指導要録を作らないといけないなら、そう教員の負担は減らないと思うし、通知表なしでは、保護者等へのコミュニケーションもむずかしくなるかもしれない。
 
いくつか調査を見ていると、通知表をつけたり、指導要録を書いたりする成績処理が先生の負担となっている。
文部科学省「教員勤務実態調査」(2006年7月分)によると、小学校の先生は成績処理(この調査では成績処理に関わる事務、試験問題作成、採点、提出物の確認、コメント記入等を含む)に1日平均1時間40分(中学校の先生の場合、1時間14分)使っている(持ち帰りも含む)。
休日残業も中学校の先生が多くを部活動に使っているのに対して、小学校では約2時間成績処理に費やしている。
 
また、文部科学省が2014年に全国の公立小中学校451校、小学校教諭3,364人、中学校教諭3,393人に調査したところ、50%以上の教員が従事する業務のうち、負担に思う人の割合が高いものは、「国や教育委員会からの調査やアンケートへの対応」、「児童・生徒、保護者アンケートの実施・集計」、「研究会等のレポート作成」、「保護者・地域からの要望・苦情等への対応」、「通知表、指導要録の作成」など。
 
実際の教員の声としても、学校で音楽(または美術、技術家庭など)担当は自分だけみたいなケースだと、膨大な生徒数の成績を付けなければならないと聞く。
指導要録は、文科省の通知で様式例が示されているが、「学校や設置者においては,学習評価の妥当性,信頼性等を高めるとともに,教師の負担感の軽減を図るため,国等が示す評価に関する資料を参考にしつつ,評価規準や評価方法の一層の共有や教師の力量の向上等を図」りなさいとある。つまり、学校や教育委員会で一定のカスタマイズはしてもよいものなのだ。
 
僕が知らないだけかもしれないが、指導要録については、多少でも簡略化したという例はほとんど聞いたことがない。むしろよく聞くのは形骸化しているという話だ。
  • 本人や家族から情報開示請求がくることもあるので、指導のなかで気になったことがあっても、ネガティブ情報は書きづらい。
  • 通知表があるのに、なぜ指導要録まで必要なのかよくわからない。
    ※校務支援システムなどのITで両者の作成・連携をしている学校も多いと思うが。
  • 各教科、観点別に細かく記載しなければならないので、手間が膨大である

きめ細かく学習評価をすることで、日々の授業に活かすということや、担任が変わってもある程度の情報はちゃんと引き継がれることなどは必要だと思う。だから、指導要録がまったくムダだとは思わない。しかし、もし、本来のそうした目的や機能が、実際はあまり機能していないとすれば、何のために膨大な時間が使われているのかということになる。

この問題は、まだあまり実態把握できていないので、安易にそう結論づけたりはしないが、実際のところどうなのだろうか???

聖域視されているテーマかもしれないのだが、、、文科省も様式は参考案と言っているのだし、教育委員会で見直している例は出てこないものかな???

 

★今日はここまでにします。また近いうちにアップします。

 

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【忙しい学校 どうする?】新人教員自殺の訴訟から考える、ずさんな労務管理

今日は、なにやらプレミアムフライデーだそうでして、いやはや最初聞いたときは、これはスーパーの安売りセールか、それとも特大エビ天でも出てくるのかと思いやした。

・・・と、まあ、冗談はさておき、午後3時には仕事を終えて人生楽しみましょうや、という趣向のようです。そんないいことなら月末金曜だけと言わずに、もっとやったらええがな、と思いますが。月1でも、なかなかやれる企業や役所は少ないかもしれませんね。

学校はと言いますと、おそらく今は年度末に向けて成績処理やら卒業式の準備やらで、忙しい時期ではないでしょうか?ここに地方議会の対応で質問なんて飛んでこようものなら、調査ものも出てくるかもしれません。なかなか3時に終われる先生は少ないでしょう。

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さて、昨日は忙しい学校をどうするか、考えて行動するうえで、重要な判決が出ました。朝日新聞2017年2月24日より引用します。

 東京都西東京市の市立小学校で2006年、新任の女性教諭(当時25)が自殺したことをめぐり、両親が地方公務員災害補償基金に対し、公務災害と認めなかった処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(後藤博裁判長)は23日、一審に続いて「自殺は公務が原因」と認め、処分を取り消した。

 判決によると、女性は同年4月に着任。2年生の学級担任になったが、保護者からのクレームなどへの対応が相次ぎ、7月にうつ病と診断された。10月に自殺を図り、約2カ月後に死亡した。同基金が自殺と公務との因果関係を認めなかったため、両親が提訴した。

 判決は「上司からの手厚い指導が必要だったのに、その形跡はない」と述べ、女性への支援が不足していたことを指摘。校外の初任者研修で指導担当者が「病休・欠勤は給料泥棒」と発言したことなども認め、「業務による強いストレスがあった」とした。
両親によると、女性は小学校時代の担任らにあこがれて、教員を目指したという。判決後に会見した父親(68)は「いまも教育の場でこういう状況が起きていると聞く。次世代を育てるという教育の場が正常化されることを願っています」と話した。(朝日新聞2017年2月24日)

 

保護者対応の問題、学校側の組織的なサポートのなさ、初任者研修での指導という名のいじめなど、反省し、検討しなければならないことはたくさんあります。

自殺を図る約1週間前、母親に送ったメールが残っています。

泣きそうになる毎日だけど。。。。でも私こんな気分になるために一生懸命教師を目指したんやないんに・・・おかしいね。今日も行ってきます。

なんとも悲痛な話です。昨年12月には、NHKの取材によると、ここ10年の間に少なくとも新人教員の20人が自殺したことが報道されました。

新任教員だけの問題ではありませんし、数の問題でもありませんが、このような自殺が一人でも起きてほしくない。そのためにどうするか、自分に何ができるかを問う日々です。

 

今日は今回の訴訟からも提起される、次の問題をとくに取り上げたいと思います。

女性の死後10年以上たっても決着がついていない理由の1つに、学校の労務管理のずさんさが挙げられる。

労災・公災では、過労死ラインと呼ばれる80時間超の時間外労働などが証明できれば、認められやすい傾向がある。しかし、代理人の平本紋子弁護士によると、今回の事件では、タイムカードなど客観的な時間を示す証拠がなかったという。

「自宅での仕事もかなりあったはずで、私たちは少なくとも100時間以上の時間外労働があったと考えていますが、客観的な証拠が乏しかった。長時間労働が認められれば、早く決着がついたと思いますが、トラブルなどの負荷の部分で争わざるを得ませんでした」(平本弁護士)

それでも裁判では、最大で月75時間程度の時間外労働が認められた。

(弁護士ドットコム記事2017年2月24日)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170223-00005747-bengocom-soci

教師の過労、働き過ぎの背景として、この記事で指摘されているように、学校の労務管理が甘々であることがあります。

そもそも、教員には残業代は出ない(正確に言うと、教職調整額といって4%だけ上乗せで支給されている)ため、労務管理という意識が管理職にも、一般の教員の側にも乏しいのが多くの学校の現実です。

データを確認しましょう。

文部科学省「教員勤務実態調査」(2006年)によると、教員の毎日の退勤管理をどのように行っているかという質問に対して、小学校では「報告や点呼、目視などで管理職が確認している」(66.2%)、「とくに何も行っていない」が18.1%です。「タイムカードなどで退勤の時刻を管理している」は0.1%に過ぎません。

中学校では、「報告や点呼、目視などで管理職が確認している」(70.7%)、「とくに何も行っていない」が21.5%です。「タイムカードなどで退勤の時刻を管理している」は0.2%に過ぎません。

高校では、「報告や点呼、目視などで管理職が確認している」(58.0%)、「とくに何も行っていない」が38.7%です。「タイムカードなどで退勤の時刻を管理している」は0.0%です。

まったく笑い話のようですが、「報告や点呼、目視」と言っても、管理職がいない(早く帰った)ときはどうしているのでしょうか?

 

さすがに、これは10年前の調査なので、ITの進化も目覚ましい最近はもっとよくなっているかと思いましたが、どうもそうとは言えないようです。

連合総研の2015年の調査によると、「出・退勤時刻の把握は行っていない」、「出勤簿への捺印により」、「把握しているかどうかわからない」といった回答が多く、これらを合わせると、小中学校とも8割近くに上ります。

出勤簿への捺印は朝出勤したかどうかの確認にとどまっている可能性が高い(つまり退勤時間の把握にはなっていない)と思います。蛇足ですが、霞が関の中央省庁でもいまだに、捺印による出勤管理が行われているところは多くあり、企業出身者の多くはびっくりしていました。

 

つまり、2つの調査からわかるのは、タイムカード等である程度はきちんと把握している学校は1割あるかないかに過ぎない、という事実です。

ご案内のとおり、これでも総労働時間の把握ではありません。職員室を出た後の部活動指導や自宅での持ち帰り残業も多いからです。それにしても、大変お寒い事情と言わざるをえません。

学校や教育委員会にはもともと予算がそうないという事情はありますが、教職員の働く環境という点に予算配分の優先度が低すぎたという結果でもあります。

今回の訴訟だけではありません。いくつかの訴訟をみても、教員の過労といっても、労働時間の認定は困難がつきまとっているようです。それから、もうひとつの問題として、残業が管理職の指揮命令下のものではなく、教員の自主的なもの、だから管理職の責任はない、といくつかの判例では認定されてしまっています。これもなんともオカシナ話なのですが、別のところで改めて解説します。

もっとも、労働時間を把握したからといって、教員の仕事が減るわけではありませんから、多忙化解消にはつながりません。しかし、多くの場合、学校というところは、管理職も同僚も大変マジメな人が多い職場なので、現実をよく見るというのはとても大切です。一生懸命子どものために働いているのはすごいけど、さすがにヤバい量だよと、気づけるようにしておくのです。

具体的にはどのようなことから始めたらよいでしょうか?

とってもアナログな方法ですが、各教職員が帰るときにはボードか用紙に退勤時間を書き込むといったことから始めてもいいかもしれません。

もっとしっかりした方法を行うなら、京田辺市の事例が参考になります。パソコンのログオフ時刻をもとに、翌日には管理職のPC上に各教職員の退勤時刻が一覧で出てくるようになっています。深夜まで残業している人の欄は赤くなりますし、昨日はだれが大変だったのか、最近遅くまで残ることが多いのはだれなのかなどの情報がわかります。

★図はイメージアップのためのデモデータです。

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 出所)文部科学省学校マネジメントフォーラム資料(2016年10月28日)

 

繰り返しますが、出退勤の時間把握をすれば、それで長時間労働の削減になるというほど甘くはありません。しかし、確かな現状把握なしに、問題や課題を明らかにすることはできません。

★今日はここまでにします。また近いうちにアップします。

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【小難しいこと翻訳するぞ】カリキュラムマネジメントってなんなのさ?

新しい学習指導要領案、読んだ?

先日案が公開された次期学習指導要領では、小学校では英語が5年生から正式教科になり、3年生から外国語活動が始まったり、プログラミング教育が盛り込まれたり、教える内容は増える見込みです。

また、小中学校で「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」を、中学校では英語の授業は原則英語で行うよう求めるなど、授業方法の改善も盛り込まれています。

現場は大変ななか、期待を寄せられているカリマネ

新聞報道等では「教員の長時間勤務が指摘される中、学校現場の負担は増すことになり、『質と量』を両立させられるかが課題になる」(朝日新聞2017年2月14日)、「心配なのは、先生の多忙を解消できるかだ。ただでさえ、授業時間が満杯なのに、英語やプログラミング教育などを押し込んで消化できるか。」(中日新聞2017年2月15日)といった指摘が目立ちます。

これに関連して中教審の学習指導要領改訂の答申を取りまとめた無藤隆教授は、次のようにコメントしています。

「これ以上学校に求められたらパンクする」という現場の声を踏まえ、ポイントとなるのが「カリキュラム・マネジメント」だ。教員が個々で取り組むのではなく、連携し、学校全体の教育力を高めるというイメージだ。学校が引き受けてきた慣例を一度整理し、地域や家庭が得意なところをお願いし、メリハリと重点化が必要だ。
(朝日新聞2017年2月15日)

んーどうでしょう?新聞の限られた文字数ですし、これだけ読んでも、いまひとつピンとこない方が多いのではないでしょうか?

写真は今回のテーマには関係ありません。今日の食べた大阪のたこ焼き!写真のあとで解説はつづく。

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ぶっちゃけ、カリキュラムマネジメントってなんなの!!??

読者のみなさんにとっては、ちょっと退屈かもしれませんが、まずは新しい学習指導要領案の該当箇所を見ましょう。小学校も中学校も文言はほとんど同じ(児童と生徒のちがいくらい)、各2か所登場します。アクティブラーニングというカタカナ語が表面上は消えたのに比べると、大きな扱いと言えるでしょう。

※引用のあとに少し僕のコメントを入れます。

各学校においては,児童や学校,地域の実態を適切に把握し,教育の目的 や目標の実現に必要な教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てていくこと,教育課程の実施状況を評価してその改善を図っていくこと,教育課程の実施に必要な人的又は物的な体制を確保するとともにその改善を図っていくことなどを通して,教育課程に基づき組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向上を図っていくこと(以下「カリキュラム・マネジメント」という )に努めるものとする。

ふむふむ。長い文だなあ。。。。215文字!

どうも学校ではカリマネというのが必要らしいということは分かるが、抽象的な説明が続いて、わかりづらいよね。。。学習指導要領解説では懇切丁寧に解説してくれるのかなあ???そもそもこれを書いた文科省の人はほんとに腹落ちして書いているのかなあ?

 各学校においては,校長の方針の下に,校務分掌に基づき教職員が適切に役割を分担しつつ,相互に連携しながら,各学校の特色を生かしたカリキュラム・マネジメントを行うよう努めるものとする。また,各学校が行う学校評価については,教育課程の編成,実施,改善が教育活動や学校運営の中核となることを踏まえ,カリキュラム・マネジメントと関連付けながら実施するよう留意するものとする。

ほほう。学校で特色を出せと言っているらしい。特色って文科省や学校現場はほんと好きだなあ。。。そして、学校評価と関連づけよと。ん~、どういうことなのかなあ?謎は深まる。。。

なぜカリキュラムマネジメントはわかりづらいのか?

という感じでしょうか?関連する中教審答申にはもっと詳しく書いていますが、長くなるので、ここでは引用しません。

答申を読んでも、どうもこの、カリキュラムマネジメントというのは、実にわかりづらい。

なぜでしょう?

それは、組織マネジメントという言葉もそうなんですが、むずかしい言葉がドッキングしているからです。まずカリキュラムという言葉の意味、次にマネジメント。2つともやっかいな多義的な言葉なので、それがドッキングした言葉はもっとわかりづらい。

 

とまあ、文句ばかり言ってないで解読を、進めます。

カリマネの定義は論者により少しずつ異なる点もありますが、第一人者のひとりの田村知子准教授は「カリキュラムを主たる手段として、学校の課題を解決し、教育目標を達成していく営み」と説明しています。そしてカリキュラムマネジメントの目的は、各学校の教育目標の具現化にある、としています

※田村知子(2014)『日本標準ブックレットNo.13 カリキュラムマネジメント―学力向上へのアクションプラン―』、田村知子ほか(2016)『カリキュラムマネジメントハンドブック』などを参照。

カリマネのエッセンスは何か?

なるほど、文科省や中教審よりは短い文でスッキリしてますね。

ただし、この定義では広すぎて、さまざまな要素が入ってきてしまいますから、学校現場は混乱しないでしょうか?だって、課題解決とか教育目標達成とか言ったら、なんでもそうじゃないですか?たとえば、挨拶のしっかりできる礼儀正しい子を育てるという教育目標のために挨拶運動を毎日やります、としたら、これもカリマネで改善していくの??

そして、あたかもカリキュラムマネジメントが特効薬のように期待されても、学校がよくなるとは思えません。逆に、形だけのカリキュラムマネジメント、なんとなくやったふりをするカリマネ(これをぼくは”仮マネ(仮そめのマネジメント)”と命名いたします!)が広がっても、ダメでしょう。

いろいろ僕も悩みましたが、いまは、こう捉えたほうがよいと考えています。

読者のみなさん、どうですか?ご意見、ご感想は気軽にお願いします。

⇒senoom879あっとgmail.com またはフェイスブックメッセージ

  1. カリキュラムマネジメント(カリマネ)とは、まったく新しいことではなく、いまも多かれ少なかれどこの学校でも行っていること。ただし、これまで多くの学校では、教科ごと、あるいは学年ごとに年間計画を立てた上で、そのあとのことは、各教師が授業を行い、各教師で振り返るという個業(個人プレー)であることが多かった。
  2. カリマネでは、個業にとどめず、各教科で取り組んだことと教科横断で挑戦してきたことを教科単位や学年、学校全体で振り返って、教育課程に反映し改善していくことを強めていく必要がある。
  3. たとえば、あなたの学校で「子どもの表現する力を伸ばしたい」という目標があるとする。表現力をつけるために、国語ではどうしていたか、社会や総合ではどうしてきたか、それらの関連はうまくできていたか、ゲストティーチャーを呼ぶなど教育効果を一層高める工夫はなされていたかなどを振り返って、次年度の教育課程では具体的にどの点をもっと見直せばよいか、どのような点はよい傾向にあるので継続・発展させていくかなどを検討していくこと。
  4. カリマネの主たる狙いは、教育活動を組織的に向上させること(≒学校教育目標の達成の一部)にあり、多忙化対策ではない。とはいえ、カリマネを錦の御旗にして、各学校は教育課程を編成・見直すなかで、薄くてよい単元(さっと終わらせるもの)等を明確にしていくことも、多忙化の現状に照らすと重要となる。
  5. 学校評価を通じて、教育活動や教育課程を評価し、見直すこととカリマネが重なる点は非常に多い。ただし、次の点で留意が必要である。
  • 学校評価は教育活動だけでなく、学校の組織運営も対象としている点で、カリマネの主たる関心とは少しずれる。(ただし、カリマネの定義が田村准教授のように広い場合は、学校の組織運営もカリマネの検討対象となりうる。ややこしいなあ。)
  • 少なくない学校で、学校評価というものが、教職員、生徒等へアンケートをとるなどして、その結果を眺めてちょこっとコメントする程度に終始していることもあり、教育活動や教育課程の改善にまでは本気で踏み込めていない現実がある。
  • そのため、学校によっては、学校評価を衣替えして統合・発展させたものとして、カリマネを位置付けてよいと思われる。あるいは学校評価と一体的に取り組むものとしてカリマネのことは説明する。新しいものが純増すると教職員に思われては、多忙化した今日、現場ではまず浸透しないのだから。

★今日はここまで。では近いうちに!

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【忙しい学校 どうする?】職場改善・業務改善で大切にしたいこと

今週は宮崎県教育委員会の研修で、職場改善、多忙化対策をテーマに小中学校、特別支援学校の校長先生たちにお話しました。

★だれが、どのくらい多忙なのか

★多忙化の影響はどこにくるか

★なぜ多忙化は解消してこなかったのか

★どうしていくか

の4点について提案しました。

  宮崎といえば、南国!

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校長頼りばかりでもいけませんが、やはり校長の考え方が変わると、学校は前にとても進みやすくなります。ぜひ教職員や地域のアイデアを集めて、少しずつでも多忙化に対して行動してほしいと思います。

また、先生たちは、減らす、やめるということは苦手です。そこは校長が決めなければならない点もあります。

学校は前例・伝統・慣例が大好き。もちろんよいものは続けていくべきでしょうが、そもそもの目的を確認し、必要性の薄いものはやめる、または別のものと統合・整理するといったことをしていく必要があります。

こうした研修は、10月に文科省の学校マネジメントフォーラムで基調講演したときの提案が軸となっています。このときより今はお話できるデータや事例も増えていますが、基本はこのときのものです。

先週、マネジメントフォーラムの動画がyoutubeにアップされました。

資料も公開されていますので、当日参加された方はまた気持ちを確認するために、参加されなかった方は参考になる点があれば、御覧いただけると、うれしいです。

もちろん、僕以外の講演や事例発表もたいへん勉強になります。会場にいたときの臨場感まではビデオではいまひとつ伝わりませんが、2回ともとても盛り上がりましたよ。

★妹尾のプレゼンは開会・行政説明のあと、2/6です。自分の声は聞きなれないし、ちょっと恥ずかしい。

youtu.be

資料はスライドシェアでも公開しました。

www.slideshare.net

※資料は文科省のページにもアップされています。

第1回学校マネジメントフォーラムの開催について:文部科学省

第2回学校マネジメントフォーラムの開催について:文部科学省

 

感想などはお気軽にどうぞ。

講演・研修依頼も募集中です。九州ですと、少し前には大分県で学校と地域との連携・協働をテーマにも研修しました。温泉もたくさんあるし、ご飯はうまいし、また訪れたいです。

★それでは、また近いうちに書きます。

 

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新しい学習指導要領案と部活動

今日の夕方に学習指導要領の案が公表されたようだ。僕のフェイスブックでは教育関係の方が多いので、みなさんシェアが盛んにおこなわれている。

いまパブコメにかかっている学習指導要領の全文は次のサイトで見ることができる。

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000878&Mode=0

 

「アクティブ・ラーニング」という言葉は消えて、「主体的・対話的で深い学び」という表現になっているとか、いろいろあるようだけど、今日は別の話題。

部活動は、どうなったんだっけ?

中学校の学習指導要領案の中で、部活動は検索した限り(全文はかなり長いが)1か所のみ。次に引用する。

生徒の自主的,自発的な参加により行われる部活動については,スポーツや文化,科学等に親しませ,学習意欲の向上や責任感,連帯感の涵養等,学校教育が目指す資質・能力の育成に資するものであり,学校教育の一環として,教育課程との関連が図られるよう留意すること。その際,学校や地域の実態に応じ,地域の人々の協力,社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行い,持続可能な運営体制が整えられるようにするものとする。

ちなみに、現行の学習指導要領の記述は次のとおり。

生徒の自主的,自発的な参加により行われる部活動については,スポーツや文化及び科学等に親しませ,学習意欲の向上や責任感,連帯感の涵養等に資するものであり,学校教育の一環として,教育課程との関連が図られるよう留意すること。その際,地域や学校の実態に応じ,地域の人々の協力,社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行うようにすること。

 

ポイントは少なくも、2点ある。

第1に、「学校教育の一環として,教育課程との関連が図られるよう」と書いている。ここは現行と同じだ。つまり、部活動は現行の同様、教育課程外ということ。だから、学校の判断で、やるかやらないかは自由(そもそも生徒の自主的な活動だよ)、と読んでよいのだろうが、「学校教育の一環」としているので、非常にわかりにくい。中途半端な記述のままと言われても仕方ないと思う。

第2に、「持続可能な運営体制が整えられるようにするものとする」とわざわざ書いている。これは現行にはなかった記述なのだから、今回それなりに強調したいということだろう。

ここは、逆に読めばよい。つまり、「今のままでは持続可能な運営体制にならないでしょ」と言いたい背景があるのではないか、と推測する。

ゴールネットとサッカーボール

詳しくは学習指導要領の解説というのが文科省から後日出るので、それを読まないとわからないが、関連するのは昨年12月に出された中教審の答申だ。

部活動は、異年齢との交流の中で、生徒同士や教員と生徒等の人間関係の構築を図ったり、生徒自身が活動を通して自己肯定感を高めたりする等、教育的意義が高いことも 指摘されているが、そうした教育が、部活動の充実の中だけで図られるのではなく、教育課程内外の学校教育活動との関連を図り、学校の教育活動全体の中で達成されることが重要である。

 

少子化が進む中で、部活動の実施に必要な集団の規模や 指導体制を持続的に整えていくためには、中学校単独での部活動の運営体制から、複数の中学校を含む一定規模の地域単位で、その運営を支える体制を構築していくことが長期的には不可欠 

 

部活動が教育課程内の教育活動と相乗効果を持って展開されるためには、前述の① においても述べたように、部活動の時間のみならず、子供の生活や生涯全体を見渡しながら、生徒の学びと生涯にわたるキャリア形成の関係を意識した教育活動が展開さ れることが重要であり、短期的な成果のみを求めたり、特定の活動に偏ったりするも のとならないよう、休養日や活動時間を適切に設定するなど、生徒のバランスの取れた生活や成長に配慮することが求められる。

 

 部活動も含めた、子供の自主的・自発的な参加により行われるスポーツや文化、科学等に関する活動の実施に当たっては、教員の負担軽減の観点も考慮しつつ、地域や学校の実態に応じ、地域の人々の協力、社会教育施設や社会教育関係団体等、各種団体との連携など、生徒にとっても多様な経験の場となるよう、運営上の工夫を行うことが求められる。

なるほど、答申のほうが多少具体的だし、理解しやすい。やっぱり、言いたいこととしては、部活動は効果はあるけど、大事な活動としては部活だけがすべてじゃないよね。だいたいやるなら、持続可能になるようにしていかないと、いろいろムリが続くのはよくないよ、ということらしい。

もし、それならそう学習指導要領にももっと書けばよいのに、って思った。

ちなみに、地域との連携を図れと学習指導要領ではうたっているが、学校教育の一環として行い続ける限りでは、怪我やいじめなどがあったら学校の責任の範囲内ということだから、教員の負担はそう減らない。外部指導者を採用しても、結局顧問の先生も見守っていないといけないとか、指導方法や生徒への接し方で両者がもめるといったこともよくある話。

もっと踏み込むなら、「地域のスポーツ・文化活動や社会教育として実施可能なものは可能な限り、学校教育の外として実施することが望ましい」と書いたほうが、持続可能な運営という意味ではよいと思う。

それはさておき、学習指導要領やその解説にどうこう書かれようが、結局は部活は生徒の自主的な活動ということなんだし、学校でもっと工夫・改善できることも多いのではないか?

 

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【忙しい学校 どうする?】学力テストの平均点がそれほど大事かね?

日本の教育行政や学校現場には、熱心で人のいい人は実に多いけれど、変な方向に労力を割いている(あるいは渋々割かざるを得ない)人もいる。最近、全国学力・学習状況調査(以下、学力テストと略)に関連して、立て続けに嫌だなと思うことを聞いた。

全国各地でこうだとは言わないが、いくつかの地域では、学力テストの結果を気にするあまり、次のようなことが起きている。

  • 都道府県教育委員会は市町村教育委員会へプレッシャーをかけ、
  • 市町村教育委員会は学校へプレッシャーをかけ、
  • これを受けた学校の管理職は、5年生や6年生の学級担任(中学校であれば2年生や3年生の担当教科の教師)にプレッシャーをかけ、過去問いっぱいやらせ、
  • 当の教員たちの中には、平均点を下げるような子(学力が伸び悩んでいる子、障がいなどが背景でそうなっている子も含まれる)は、当日休んでくれたらいいのにって内心思ってしまう。
  • 過去問をやるのが悪いとは限らないが、授業時数の少ない中、過去問対策に精を出して平均点を上げた先生や学校が評価される。ほかの力を伸ばすことを犠牲にしていても。
  • 地域によっては都道府県や市独自の学力試験を行っている。これも、建前は学力向上や授業改善に役立てるだが、裏目的としては、全国の学力テストの順位や平均点を上げることに活用することにある。
  • そして、この独自テストの準備(試験問題の作成や対策)や採点作業に現場教員の貴重な時間がまた割かれる。

勉強中疲れて寝てしまった受験生

 

※次の記事ではこう指摘している。

全国学力テストは「建前」としては学習状況の把握が目的とされているが、その順位を都道府県、各学校が必死になって争っているのが現状だ。そのために、過去問題をやらせるなど学校が「対策」を講じているのは、もはや「常識」でしかない。

bylines.news.yahoo.co.jp

本来の学校教育(それも義務教育段階)の果たすべきことはなんだったのだろう?

学力テストをして平均点に遠く及ばない子の学力を、どうしたら付けられるのか、そこにプロの知恵を絞ることにも、あるのではないか?とにかく過去問やらせて慣れさせて、多少点数上がったとしても、その子は本当にハッピーなのか?

学力テストの導入目的とはいつの間にか逆行するようなことが、現場では当たり前になっている。実に危うい。

忙しい、忙しいと言いながら(たしかに学校の多忙化は事実なんだが)、あるいは、教科書を終えるだけでもキツキツだと言いながら、ここにそこまでの時間と労力を割くのか?というところに使っていることはかなりあるのではないか?

 

本気で子どものどんな力を伸ばしたいのか、よくよく再確認したい。言い換えれば、なんのために先生やっているの?ってところにも重なる話。

学力テストの結果はひとつの通過点なり参考資料に過ぎない、教育委員会にいくらごじゃごじゃ言われようが、うちの学校で大事なことはテストの平均点じゃない、ここにある。そう言える校長は、もっといないものか?

うちの学校では、そりゃ、生きる力を伸ばすことですよ。知徳体を伸ばします、学力テストだけじゃあありません。そう言ってくる校長は多い。これは、まちがっているわけじゃない。でも、それではぼやっとし過ぎているし、うちは塾じゃないと言っているのと同じ内容であり、特段のメッセージ性はない。

なにか、しかと言えるものがないという人は、残念だ。マネジメントやリーダーシップの議論以前の問題があるように思える。

多くの関係者には悪意はない。むしろ、仕方がないとか、善意で(よかれと思って)進んでいる。わたしも数字で突き上げがくるんでね、と。だから、軌道修正が効きにくい、よけい危うい。

繰り返す。日本の教育行政や学校現場には、熱心で人のいい人は実に多い。けれど、変な方向に労力を割いていることはないだろうか?

 

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【忙しい学校 どうする?】印刷、集金・支払い業務は教員の手から離そう

先日、岡山県の美咲町の加美小学校を訪問しました。

岡山県では、国や全国のうごきに先がけて、教師業務アシスタントの活用を進めています。そのなかでも、加美小の取り組みはとても参考になります。

学校全体でみなさん協力して取り組んでいますが、とくにキーパーソンたちは、こちら↓ 

左から、景山校長、アシスタントの池田さん、(美咲町の名前にふさわしく美しい方々に囲まれて機嫌のよい)妹尾、事務職員の大天さんです。

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学校ではみんな、印刷に時間を使っている

まず、教師業務アシスタントってなに?について。

ざっくりいうと、学校の先生たちが担ってきた業務の一部を手伝ってもらう方のことです。ひとつの例は、印刷を代行してくれます。

これは、民間企業の人からすると、そんなたいした仕事に思わないかもしれませんが、小学校や中学校のお子さんがいる方ならわかるはず。

学校には実にプリントや紙でのお知らせが多いですよね。宿題はもちろん、補習に使うもの、授業中に使うプリント、学校からの各種お知らせ(学校便り、学級通信、運動会の案内など)、教育委員会からのお知らせ、懇談会やPTA会合などの案内と出欠確認などなど。

これはこれでもっと削減なり工夫をしていくべきところもありますが(いまの時代メールやウェブで済むという家庭も多い)。紙を打ち出して、児童数や家庭数(兄弟姉妹がいる場合は家庭にひとつという文書もある)を数えて、各学級に配って、と大変な労力を要します。

小学校や中学校、高校は、通常は、秘書的な方や補助的なスタッフはいません。ちょっと大きな会社なら、ちょっとしたことを手伝ってくれるスタッフはいるのではないでしょうか?僕が霞が関の省庁にいたときは非常勤のスタッフの方が印刷などを手伝ってくれていました。

学校の場合、事務職員はいますが、会社でいうところの総務、財務、調達管理などいろんな仕事をこなしており、多くの場合、正直、印刷まで手伝ってあげられません。

なので、一般の教員はもちろん、校長や教頭が平気でコピー機の前でかなりの時間を使うなんてことが、あります。会社で社長や部長がそうしていたら、たぶん驚く人も多いと思いますが、学校はそのあたりのコスト感覚もちがいます。

1人の教員あたり、おそらく印刷に時間を使う時間は1日そう多いわけではないと思いますが、ちょっとしたことも重なると大きな時間となります。それに自分の授業中に明日必要なプリントの印刷をしてくれていたら、どうですか?気持ち的にも楽になります。

教員がお金を扱うしごとを大幅に減らす

教師業務アシスタントの導入は、岡山県や横浜市など、まだ事例は限られています。国もこの仕組みをまねてでしょうか、来年度は関連予算を要求しています。なので、ぜひ手を挙げるといいと思います。

それで、他の事例でも、印刷関連、それから授業準備に必要な機材をとってきたり、セットしたりなどは、アシスタントの業務としてはよくある話です。加美小が工夫しているのは、学校徴収金業務もアシストしていることです。

徴収金ってなに?という方も多いと思います。

公立学校は税金で運営されていますが、正直足りない分や家庭負担でお願いしたいものがあり、集金があります。学級費とか学年費と呼ばれるものも、学校徴収金のひとつです。小さなことでいえば、算数ドリルとか、大きなことでいえば旅行(校外学習かな、正確には)のバス代とか。

年間このくらいかかると一定の予測をたてて、毎月いくらかずつ集めたり(特定の時期に負担が重くなり過ぎないように平準化)、当初予定しなかったことで集金が発生したりもします。

これを口座振替にしている例もありますが、集金袋で児童生徒がもってくるという、昔ながらのスタイルの学校もまだまだ多いと思います(うちの子どもの小学校は集金袋方式でして、3人もおりますと、おつりがないように入れるのがちょっとした手間です)。

で、このお金を扱うというのが、教員にとっては実に神経を使うし、事務もややこしい。もちろん預かったお金をなくしてはいけませんし、誰が払ったかのチェックも必要ですし、集めたお金があっているかの確認も必要(たまに足すとなぜか合計額と実際が合わないとか)、業者ごとへの支払いも必要ですし(場合によっては銀行に振込に行かねばなりませんし)、予定とちがって集めすぎた場合は家庭に返す手続きも発生しますし、決算報告も必要ですし、などなど。

池田さんは、月末など学級費等を集める時期にあると、各クラスをたずねて、集金袋を預かります。その後、金額の確認、提出した人のチェックなどなど、集めた後の工程の作業の多くはやってくれるのです。

もちろん、お金を扱うことですし、丸投げではいけません。管理は担任の役割、全体の所掌は事務職員が行っていますし、管理職の決裁が必要な工程もあります。とはいえ、従来の多くの作業を教員の手から離しています。

これは、アシスタントの池田さんにとっては神経をつかう大変な仕事でしょうが、教員からとっても喜ばれていることのひとつでもあります。

仕事の一部を投げるだけではなく、仕事自体を見直す

大事なポイントがいくつかありますが、加美小で注目するべきは、アシスタントの活用と併せて、学校徴収金のルール(学校のルールを定め、のちに町の要綱に)、書式の統一(学級などによって微妙に様式がちがっていた)、ITの活用(手計算はしない)などを進めている点です。

とくに注目するべきは、なにを徴収金で対応するか、なには公費(学校や自治体の予算)で対応するかを明確にしつつある点です。これは家庭負担の軽減の観点からも重要な取組です。

事務職員の大天さんが「学校事務」(2016年3月号)に書いていることから引用します。

教員とアシスタントの業務を区分していく中で、事務業務の流れや担当、システムなどの見直しを行った。

・・・(中略)・・・

特に会計業務においては、特別支援学級児童、転出入児童の複雑な会計処理や、公費私費の負担区分について、学校としての統一と徹底ができたことも、大きな成果といえる。また、保護者集金によるすべての会計はこのシステムで統一的に管理でき、年度末には、購入した教材の評価も残せるようにした。次年度の購入計画を立てる際の資料も作成できるようになっている。

なにか仕事をお願いする、投げるというだけではなく、業務自体を見直すということですね。企業や行政でもITを導入するときに、業務自体を見直さないとITだけ入れてもダメだ(効果は薄い)と言われます。それと同じです。

事務職員が企画、コーディネートする

加美小では、大天さんがこのような業務の見直しやルール、仕組みづくりを管理職と協力しながらリードしています。財務、会計、書類整備などをよく知る事務職員の強みを活かした、すばらしい仕事のひとつだと思います。

また、長く教員は自前でやってきたため、アシスタントが来ても、なにをお願いできるか、わからないという方もいます。それに、あまり一時期に依頼が集中してもいけません。このあたりのコーディネートも大天さんがしていますし、池田さんは事務の仕方などわからないことがあれば、気軽に大天さんにたずねるということにしているそうです。

このように、一人職や支援するスタッフが孤立しないようにすることも大切なポイントです。

ちょっとした工夫を紹介します。下の写真は、アシスタントにお願いしたいことを教員がメモしてわたすものです。これだと、各先生は〇をつけて、ちょこっと書くだけで済みます(負担軽減のための取り組みが逆に手間を増やしてはいけませんから)。

この短冊を集めたものは池田さんのTo doリストになるということです。

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次の写真は、アシスタントが今日は何時までいて、なにの仕事をしているかをボードに書いたものです。今日は何時ごろまで依頼・相談できるか、こんなこともお願いできるかななどを考える際に参考になります。

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以上はちょっとした工夫なのですが、アシスタントの仕事をやりやすく、また周りも依頼しやすくするための例です。

また、加美小の場合、職員室に事務職員の大天さんもいるので、教員のちょっとしたつぶやきや話から、ニーズを感じとることもできているそうです。そうした事務職員らしい気づきがアシスタントと教員との間をうまく調整する秘訣にもなっているのでしょう。

教師は別のことに時間を使えるようになる

県教育委員会が実施したアンケートや学校評価の結果からも、アシスタント導入の効果は確認できます。依頼することで、教員には計画的な授業準備や教材研究に充てる時間が増えました。遅くまで残る人も減っているそうです。

横浜市教育委員会にも聞いたことがありますが、アシスタントを導入した学校での教員からの評判はとてもいいそうです。

もっとアシスタントは活躍できる!

以上はいくつかの例で、これ以外も池田さんはとてもがんばっています。たとえば、時間があるときは、子どもの九九が覚えられたか聞くなど、学習支援にも関わります。印刷や徴収金など、周りの教員たちにもすごく喜ばれていて、ある先生は、学校を異動したあとがつらくなりそう、とつぶやいていました。

なので、すでにアシスタントも十分忙しいかもしれませんが、僕はお話をうかがって、加美小にかぎらずですけど、こうしたアシスタントはもっと学校で活躍できる場面はありそうだな、とも感じました。

たとえば、岡山県のこの事業の仕組みでは、アシスタントは児童の提出物の採点や添削には携わることができない、となっています。そこは教員の本務として教員がやりなさい、ということなのでしょう。

しかし、OECDのTALIS調査をみると、中学校では、教師は採点や添削にも相当の時間を使っています。週60時間以上という過労死ラインをこえて働く教員は、週5、6時間採点や添削に時間に費やしていて(月換算すると20~25時間ですよ!)、生徒の相談にのる時間より平均的は多い時間を使っているのです。

小学校はあらゆる教科を教えますし、漢字などいろいろありますから、中学校以上に丁寧に丸付けや宿題のチェックをしている先生が多いと思います。放課後の仕事の多く、あるいは自宅に持ち帰って提出物の確認をする、という先生もかなりいると思います。
※このことは、10年前のデータですが、国が実施した教員勤務実態調査からも示されています。

僕は、丸付けや提出物の確認は、アシスタント、あるいは保護者・地域住民で学校支援してくださる方に、多くはお願いし、教員は丸付けした後の結果を眺めて、授業の仕方や個別の子どもへのケアを考える、実施するほうに時間を使うべきだと思います。

このあたりは、賛否あると承知していますが、忙しすぎる学校をどうにかしたいなら、教員から少しでも手離れできるものはするようにしていきたいものです。そして、ありがたいことに、がんばっている先生たちを手伝いたい、子どものためになることをしたい、と思ってくれる方はおそらく、みなさんの近くにかなりいるのです(もちろん、ボランティアや現状の水準の手当のままでよいのか、という議論はしていくべきでしょう)。

今日はそんなことも多く考えられたとてもいい一日でした。

ご協力いただいたみなさま、ありがとうございました。応援していますし、こうした優れた実践が広がるように、僕もいろいろ動きます!

 

◎ちょっと宣伝。直前ですが、2月4日に新潟で「忙しい学校をどうするか」をテーマに研修会を行います。お近くの方はぜひご参加ください。今回レポートしたアシスタントの話もします。

 また、リクエストあれば、ほかの地域でも開催します~

www.kokuchpro.com

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祖母との思いで

昨夜、祖母が亡くなったという知らせを受けた。85歳で、ここ2、3年は病院で寝たきりだったから、ついに来たかという感触だった。ぼくは今日は午前中仙台市の学校事務職員さん向けの研修会だったので、その講演を終えて、いまは徳島に向かっている。

実は週明けの月曜は徳島の東みよし町の研修会に呼ばれていたので、徳島にはもともと帰るつもりだった。いつもはあちこち出かけている妻も今週末は大きな予定はなかった。ばあちゃんはそのへんも計算に入れていたのかも、と思うようなタイミングだ。聞けば、苦しまず、安らかに眠ったようだ。

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僕は根っからのじいちゃん、ばあちゃん子だった。小さいころ、ばあちゃんのふとんで寝ることが多かったように思う(母は弟と)。よく腕枕をしてくれたのを覚えているし、寒い日は足をさすってもくれた。

僕にすこしやさしいところがあるとすれば、それは祖母の影響が大きいと思う。

料理好きも祖母から。実家の近くには四国88か所の10番札所の切幡寺があって、春分の日と秋分の日は縁日だ。この日やなにかお祝いごとの日には、祖母はよく、きな粉のぼた餅や巻き寿司をつくってくれた。それなりに、日本中の、あるいは世界三大料理も食べたことはあるが、やはり、ばあちゃんのつくったぼた餅が一番うまいとずっと思っている。

僕の得意料理の多くは祖母または母ゆずりである。

祖母に怒られた記憶はない。祖父はかなり厳しいところもあったが。祖母はいつも孫のことをうん、うんと聞いていたように思う。妻に言わせると、僕は自己肯定感が高い(正確にはあまり人のことは気にせず、自分軸がある)そうなのだが、だとすれば、これも多分に、ばあちゃんの影響だ。僕の場合、つい自分の子どもには、あれしろ、これしろと言ってしまうが、たまには、うん、うんといなければ、と思う。

戦前の女性の多くがそうであるように、祖母はとても我慢強く、早くから足をわるくしていたのだが、元気なうちは農業も家事もよくしていた。病院で寝たきりになったときは、食べ物が入らず、チューブで栄養剤を入れる日々となった。うちは裕福ではなかったし、祖母はたいてい自分のことは後回しだったので、贅沢なものは生涯食べないままだったかもしれない。

僕は高校を卒業した後は徳島を離れたままだったので、いっしょに過ごせる時間は多くはなかった。ちゃんと覚えてはいないのだが、帰省したときは何度かは僕も手料理をふるまったことはあったと思う。なにかいい思いも多く旅たってくれただろうか?

 

月曜は空から祖母が見ているかなという思いで、徳島で話をしていきたい。

学校の先生はだれが、なにに忙しいのか

前回の記事に続いて、学校の多忙化の実態について、観察した結果をお知らせします。

労働時間が週50時間未満の人は小学校、中学校にいない!?

ちょうどこの記事を書こうとしていていたら、昨日ヤフーニュース(元は朝日新聞記事)で次の調査結果が出ていました。

週に60時間以上働く小中学校の先生の割合が70~80%に上ることが、全国の公立小中学校の教諭約4500人を対象にした連合のシンクタンク「連合総研」の調査でわかった。・・・(中略)・・・・
調査は2015年12月、労働組合に入っているかに関係なく、公立小学校教諭2835人、中学校教諭の1700人を対象に実施。小学校1903人(回収率67%)、中学校1094人(同64%)が回答した。
調査では、週あたりの労働時間を20時間未満から60時間以上まで5段階に分けた。小学校教諭で週60時間以上働いている割合は73%、中学校は87%。小中とも50時間未満の教諭はいなかった。

headlines.yahoo.co.jp

まず、週50時間未満の人が小学校にも中学校にもいない、というのが大きなことです。これは2つの可能性があると僕は解釈しています。

ひとつは、ほぼ毎日定時で帰ると週40時間くらいになるはず(※)なので、事実上、定時で帰れる人はいない、ということを意味している可能性です。
(※)ちゃんと取れない人も非常に多い休憩時間をどうカウントするかにもよる。

もうひとつは、調査対象に偏りがある可能性。この点は、調査の詳細を見ないとなんともコメントできません。

週60時間超で過労死ライン超えが常態化しているのは、ほかの調査でも明らか

前回の記事でも書いたように、OECD国際教員指導環境調査(TALIS)2013の日本のデータを週30時間以上働いている常勤の教師を対象に集計すると、週30時間以上40時間未満の人が4.0%、40時間以上60時間未満の人が41.5%、60時間以上75時間未満の人が42.0%、75時間以上が12.5%でした。

はじめに引用した連合総研の調査が2015年ですし、ちがいはありますが、結果としてはTALISとも似ています。むしろ事態は2013年から2015年の間に悪化している、と解釈できるかもしれません。

週60時間以上というのは、月残業時間が80時間を超えますから、過労死ラインとされている水準を超えています。両方の調査を見て、このラインを超える人がたくさんいることは、学校では半ば当たり前、状態化していることが示唆されます。

TALISは中学校の先生だけなのですが、連合総研の調査では小学校の先生も忙しいことがよくわかりました。たいへん貴重なデータです。

だれが忙しいのか

そして、ここからが今日の記事の本番(TALISを使うので中学校についてのみ)。では、どんな人が、なにに忙しくなっているのでしょうか?前回の記事でデータをもとにこう特徴を分析しました。

過労死ラインを超えるくらいの長時間労働をしている教師は、部活も、授業準備も、校務分掌も熱心にやっており、もっと時間があればもっと授業準備や自己研鑽もしたいと思っている傾向が強い

そして、次の2つの可能性があるのでは、と仮説を述べました。

  • 若手に重めの部活顧問や慣れない分掌の仕事がおりてきていること
  • 中堅・ベテランでできる人に仕事が集中して、その人がすんごく多忙になっていること

そこで、もう少しデータを細かくクロス集計してみました。

長時間労働はとくに34歳までの若手に多い。ただし、中堅・ベテラン層にも広くいる。

下の表は、週の総労働時間を4つのグループに分けたうえで、年齢構成を見てみたものです。とくに週60時間以上と働き過ぎな2つのグループをよく見てください。

(注)表の下のほう、%は、4つのグループごとに、どの年齢層にどのくらいの割合で分布しているか示します。「計」の欄は年齢別に集計した合計です。各年齢のところの計の%(4.9%,13.2%など)よりも、高く出ている場合は、より出現率が高いことを示します。

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ここからわかることは主に2点です。

ひとつは、22歳~34歳までの世代(どこまで”若手”と言ってよいのかわかりませんが、教員になっておおむね10年未満の教師たち)の中には、週60時間以上75時間未満や75時間以上働いている人がかなりの割合でいる、ということです。とくに25~29歳の人の75時間以上という人は相当高い出現率です。

もうひとつわかることは、忙しいのは若手だけではない、ということです。週60~75時間や75時間以上の人は、各年齢層で1割前後分布しています。それだけ広くどの世代でも忙しい人はいるということを意味しています。

なんのせいで忙しいのか?

次にちょっと細かい表ですが、次のものは、週40時間以上働いている人を対象に、総労働時間の先ほどのグループと年齢層別に、どんなことにどのくらい時間を使っているかを整理したものです。

(注1)いくつか回答数が少ないところでは、おひとりの回答の影響が強く出ていしまいます。 

(注2)目安として、日本全体の教師の平均的な時間の使い方から2時間以上たくさん使っているものには色付けしてあります。

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ここから、次のことがわかります。

第1に、多くの時間を取られる傾向があるのは、授業の計画・準備、課題の採点・添削、学校運営と一般事務、課外活動です。

よくモンスターペアレントなど、保護者対応が大変だと言われていますが、保護者対応はそれほどの時間を示していません。もちろん、個々の学校や状況によってちがうでしょうけど、平均するとそうである、ということです。

生徒相談は、75時間以上グループのいくつかの年齢層でより多くの時間を使っている傾向にあります。しかし、週5時間前後であり、ほかの業務よりはウェイトが高いわけではありません。もっとも、保護者対応や生徒相談は精神力を使うので、よりきつい(つまり負担感やストレスは強い)という可能性はあります。

第2に、忙しくするウェイトの高いものとして、やはり、課外活動、多くは部活動の負担がある、ということです。

週60時間以上75時間未満のグループと75時間以上のグループを見ましょう。課外活動に多くの年齢層が10時間前後、特に若手では約15時間使っている人も多くいます(平均値なので、個別にはこれより少ない人ももっと多い人もいます)。この時間量は、授業の計画・準備と同じか多いくらいであり、学校運営+一般事務に関する時間よりも多いです。

部活動が生徒にとってさまざまな良さや意義はあるとは思いますが、これを見る限り、過労死ラインを超えてまで、週10時間や15時間もやる必要が本当にあるのか、僕は強く疑問に感じます。

学校の先生の中には、部活指導は好きでやっているから負担に思わないという人もいますが、そうではない人、イヤイヤ顧問にさせられている人もいます。また、書類作成や会議がムダが多い、できるならやりたくない、と多くの教師は言いますが、そうした時間よりも多くの時間を部活では使っているのです。

第3に、週75時間以上の45~54歳くらいの年齢層では、授業準備や課題の採点・添削にもかなり多くの時間を使っています。いくつか可能性があります。

  • 1人あたり多くの生徒を相手にしており、評価や成績処理などにも非常に時間がかかっている。これは家庭科など、その人しか教えられないのだが、1人や2人しかいないというケースでよく起こります。
  • 研究主任や教務主任となったり、新しい研究課題などにも精力的に取り組んでおり、手間がかかっている。

などがあるかもしれません。そうした人は元気そうでも、バーンアウトになる可能性もあり、注意が必要だと思います。

第4に、世代間ギャップと言いますか、年齢層によるちがいが明白です。75時間以上のひとに注目しましょう。若手は授業準備にも時間を使っていますが、圧倒的に部活動など課外活動の負担が重いことがわかります。重めの部の顧問にさせられている可能性が高いと思います。

35歳以降の世代では、一般事務の時間もかなり増えていきます。つまり、中堅・ベテランには分掌の主任や主幹、あるいは教頭職となり、学校運営や事務に時間がとられることも多いということを示唆します。ここが、前回の記事で述べた、「できるやつに仕事が集中する」傾向となっている可能性もあると思います。

 

では、どうするか!?

特効薬はありません。急に教員数が大幅に増えるのほど国家や都道府県の財政に余裕はないでしょうし。しかし、データからいくつか示唆されるとおり、メスを入れるところは見えてきます。

1つ目は、やはり部活動です。この負担が重過ぎるのではないか、ということは再三申し上げました。休養日はもちろんですが、部活の数を減らすことを含めてやっていくべきです。

2つ目は、授業準備や採点・添削にも相当の時間がかかっている事実。これは、急激に減らすことは難しいし、学力向上やアクティブラーニングなどでは、もっと必要という部分もあるかもしれません。しかし、教材や研究について、先人や隣人の蓄積を活用させてもらうということ、単元・教科書に軽重つけるところはないのかよく検討することなども必要かと思います。

また、業務アシスタントの活用はひとつの軽減策です。印刷やちょっとした採点などは、教員でなくてもできることは任せるという道です。

3つ目は、学校運営や一般事務です。これは、そもそも教員間での分担関係の見直し(できるやつに頼り過ぎていないか?)、事務職員と教員の分担関係の見直し、業務アシスタントの活用、会議の仕方の工夫など、いろいろ改善の余地はありそうな領域です。

今回、高校について扱いませんでしたが、おそらく中学校と似た部分も多いと思いますし、中学校以上に教員間の業務負担のバラつきが大きい(仕事が集中する人に集中する)はあると推察します。

小学校については、部活以外の部分はかなり当てはまる部分もあると思います。また、小学校ではやはり学級担任が抱え込むということをどうするか、という点もよく見なければなりません。

以上、長くなりましたが、だれが、なにに忙しいのか、みなさんの学校ではどうでしょうか?まずはよく現実を見て、本当にそれほどの時間をかけるべきなのか、あるいは無理を強いていないか、確認することだと思います。

◎前回の記事はこちら

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部活の休養日は大事だが、それだけでは解決しない

みなさん、正月は多少はゆっくりできましたでしょうか?今日から学校が始まったところも多いと思います。また忙しい日々だという方も多いと思います。

「学校の先生たちの多忙化をどうするか」は、最近も大きな話題となっています。

新人教員が自殺

NHKの取材によると、ここ10年の間に少なくとも新人教員の20人が自殺したことが、先日報道されました。

精神疾患などにかかる公⽴学校の 新⼈教員が急増し続ける中、この 10年間で、少なくとも20⼈の 新⼈教員が⾃殺していたことが NHKの取材でわかりました。教員は新⼈でも担任をもったり、保護者に対応したりする必要があ り、専門家は「新⼈教員は即戦⼒ として扱われ、過度なプレッシャーを受ける。国は⾃殺の現状を把握して、改善を図るべきだ」と指摘しています。
学校の教員は採⽤されたばかりの新⼈でもクラス担任や部活動の顧問を任されたり、 保護者に対応したりと、ベテランと同じ役割が求められています。
⽂部科学省によりますと、昨年度、精神疾患などの病気を理由に退職した新⼈教員は 92⼈で、平成15年度の10⼈と⽐べて、急激に増えています。
さらにNHKで、昨年度までの10年間に死亡した新⼈教員、合わせて46⼈の死因 について、取材した結果、少なくとも20⼈が⾃殺だったことがわかりました。
NHK 2016年12月23日

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161223/k10010817981000.html※今はリンク切れ

この報道について、SNS上で学校関係の知人からは、新人に無理をさせていている問題も深刻だが、しんどいのは新人だけではない、という話も出ていました。すべてが過重労働との関係とは限りませんが、1人でもこのような悲しいことを起きないようにするには、どうするか、僕も悶々としていて、今日は多忙化について書きたいと思います。

年明け早々には、文部科学大臣が学校の業務改善に取り組むことを語っており、通知も出ました。

文科省は来年度から教員の多忙化解消に乗り出す。各学校の課題を踏まえ、業務改善に向けた重点モデル地域を指定するほか、学校や教委に「業務改善アドバイザー」を派遣する体制を整える。運動部活動については、適切な練習時間など定めるガイドラインを策定する。さらに1月6日付で、中学校の運動部活に対して休養日を設定するよう都道府県教委に向けて通知を発出した。

教員の多忙化解消へ 業務適正化で重点モデル地域指定 | 教育新聞 電子版

 

「部活に休養日を」は浸透するのか?

「部活に休養日を」というのは、いまに始まった議論ではありません。

休養日の設定は旧文部省が1997年にも「中学校は週2日以上」「高校は週1日以上」と目安を示したが現場に浸透しなかった経緯があり、どこまで実効性を持たせるかが課題になる。 (毎日新聞2016年6月13日)

今回もどうでしょうか?国や教育委員会がどう言おうが、

  • 学校間で競争している以上、練習はやりたい、あるいは、やらざるをえない
  • 一部の熱心な保護者からの声でやらざるをえない
  • 部活命という熱血教師もいて、その人を納得させることはすごくむずかしい

などなど、現場からは冷ややかな声も聞こえてきそうです。

 過労死ラインを越えて勤務する人が半分近く

どうなるかの予測は難しいですが、実態を踏まえた話をするため、今日はすこしデータを確認したいと思います。OECD国際教員指導環境調査(TALIS)2013を活用します。中学校の常勤の先生についてのみです。日本についてローデータをもとにクロス集計しました(明らかな特異値は集計外)。

TALISでは、何時間くらい、なにに費やしたかをアンケートで回答しています。この調査方法ですと、きちんと毎日記録したものではなく、教師の主観と記憶に依存しますので、多少あやふやなところはありますが、傾向を知ることはできます。

次の表は、1週間の総労働時間別の結果です。

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まず最初にわかったのは、週60時間を超える人が多い、ということでした。週60時間労働と言うと、残業時間は週20時間超、過労死ラインといって労基署が過労死認定するときの参照基準が月80時間なので、これを超えています。

いろんな勤務形態が学校にはありますから、一概に比較することは難しいのですが、週30時間以上働いている常勤の教師を対象に集計すると、週30時間以上40時間未満の人、(つまり、ほぼ定時前後で帰れている人)が4.0%、40時間以上60時間未満の人が41.5%、60時間以上75時間未満の人が42.0%、75時間以上が12.5%でした。つまり、30時間以上働いている人の半数以上は過労死ラインを超えており、75時間以上という超過重労働の人も1割強います。

率直な感想としては、先生たちは大丈夫だろうか、心配になる結果です。

長時間労働している教師ほど課外活動(部活等)の時間も長い

また、長時間労働グループの教師ほど、課外活動の時間も長いということがわかりました。もっている授業時間や保護者対応などはそう大きな差はありません。比較的差が大きいのは、色付けした、課外活動、授業の計画や準備、一般的事務業務の3つです。

課外活動には部活動以外も入ってきますが、日本の中学校ではほぼ部活が占めると考えて間違いはないでしょう。週60時間以上75時間未満の人は授業準備に匹敵するくらいの時間を、週75時間以上の人は授業準備より多くの時間を部活に割いていることがわかります。

部活の生徒への効果は大きいことは僕もよくわかります。生徒指導上の効果に加えて、挑戦することや厳しい練習を継続することで、生徒は人間的にも成長します。『GRITやり抜く力』という本にも書かれているとおり、課外活動は、学校を卒業した後も大事になる力を育む効果があります。

しかし、学校の、教師の本来業務とは何か、と考えたとき、やはり、主客逆転しかねない、部活の行き過ぎの実態が示唆されます。

参考までに、表の下のほうには、総労働時間のグループ別に、なにの業務にどのくらいの割合の時間を割いているかも示しました。

 長時間労働している教師は部活命だけではない。授業準備も熱心。

もうひとつ重要なことがあります。このデータを見る前、僕は自分の中学生のときの体験から、「部活熱血なのは保健体育の教師に多くて、体育はほかの教科に比べると教材準備・研究も少ないだろうし」と思い込んでいましたが、どうも現実はちがうようです。

というのは、週60時間以上働いている教師の多くは、授業準備にもほかの教師と比べて多くの時間を割いている傾向があるからです。

長時間労働な教師はもっと自己研鑽したいと考えている

次のグラフは同じTALISで職能開発、つまり、研修などの自己研鑽の必要性について聞いた質問をもとに作成しました。担当教科等の知識と理解について、また担当教科等の指導法についてともに、職能開発の必要性が「高い」と回答する割合は、週60時間以上働く教師グループでは高いことがわかります。

 

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 また、「職能開発の日程が自分の仕事のスケジュールと合わない」という質問について、「非常に妨げになる」と回答する割合は、長時間労働のグループほど高く、週60時間以上75時間未満の人の42.6%、週75時間以上の51.4%が「非常に妨げになる」と回答しています。

長時間労働の教師は、部活の負担に加えて、授業準備や自己研鑽にも熱心で、学校の事務もよく担っている。できる人には仕事が集中?

加えて、週60時間以上の人には、事務業務の時間も相当あります。学校運営のカテゴリーと微妙ですが、おそらく校務分掌の業務などが含まれていると思われます。

以上のことから示唆されるのは、「過労死ラインを超えるくらいの長時間労働をしている教師は、部活も、授業準備も、校務分掌も熱心にやっており、もっと時間があればもっと授業準備や自己研鑽もしたいと思っている傾向が強い」ということです。

「できる人には仕事が集中する」というのは、企業でも役所でも、どこの組織でもありがちな話ですが、中学校でもその可能性があります。

あるいは反対に、部活も、授業準備も、校務分掌もなかなか効率的にできない人が長時間労働になっている、という可能性もあります。

おそらく、多くの学校で、現実には両方の現象が起きているのでないかと思います。(これは解釈なので十分に検証できていませんけれど)。

そう解釈する根拠のひとつは、増加する若手教員です。シニア世代が大量退職し、いまでは多くの中学校で若手が増えています。もちろん、若手だから必ずしも非効率に仕事しているとは限りませんが、負荷の重い部活の顧問にさせられたり、慣れない校務分掌に苦戦したり、同時に自己研鑽をもっとしたいと思っている若手は多いのかもしれません。実際、TALISを年齢別に集計すると、若い年齢層ほど労働時間は長い傾向を示します。

また、これにも関わりますが、「できる人には仕事が集中する」も起きているのでしょう。若手にはどうしても任せられない仕事がある(たとえば教務主任)、それは数の少ない、できるやつにやってもらうしかないといった現象です。

 

話をもともとに戻すと、こうした実態を踏まえると、部活の休養日を設けることは重要でしょうが(部活の負担が重いことは確かなので)、教師の過重労働の問題の一部分でしかありません。仮に部活の時間が多少減ったとしても、分掌の仕事や授業準備のほうの時間が増え、総労働時間は大して変わらない、という事態も考えられます。

長くなったので、今日はこのへんで。

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休養日の設定は旧文部省が1997年にも「中学校は週2日以上」「高校は週1日以上」と目安を示したが現場に浸透しなかった経緯があり、どこまで実効性を持たせるかが課題になる。

ニュースサイトで読む: http://mainichi.jp/articles/20160614/k00/00m/040/082000c#csidx55098f9becb9e1ebf01528874975fcb
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