妹尾昌俊アイデアノート

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妹尾昌俊アイデアノート~ステキな学校、地域、そして人たち

元気な学校づくりと地域づくりのヒントをお届けします!

教職員の個人力と組織力をともに高める事例から

前回の記事で、学校では「タイト」なマネジメントと「ルース」なマネジメントを組み合わせていく必要がある、という話を紹介しました。

(前回記事)学校は”ゆるい”組織か

この本(2章)に興味深い事例が載っていましたので、紹介します。

ある小学校での「内発的改善力を高める学校変革(元気のでる学校づくり)」というものです。

○それぞれの学級で低学力に停滞しがちな子どもを「伸びてほしい子」として2、3人設定。

○「伸びてほしい子」を中心に、①各学年と子どもの実態(学力の状況など)、②教員の実践と成果と課題、③今後の実践の方向性の3点に関するレポートを作成。

○上記3点は必ず含むとして、その他の内容や体裁などは自由。

○各教員が作成するレポートをもとに、教員間で情報・知識を共有する「場」を研修時に設定。低・中・高の学年ブロックでの研修と、全教職員の研修の2つの機会を活用。

○校内に「学校改善検討委員会」を設置し、その委員会が、レポート検討会で出された情報や意見を集約し、学校として共通に考えるべき課題や改善点等を教員にフィードバック。

この小学校では、レポート検討会を契機に教員間で助言し合う関係づくりが進んだようです。また、実際の学力も向上したといいます。

以下、妹尾の感想です。事例から学べることとして少なくとも4点あります。

1つ目。こうした授業改善や「伸びてほしい子」の学力を向上させる努力は、ほとんどの学校で意識はされていますが、個々の教員の取組や努力に閉じていることが多いように思います。この小学校では、学年ブロックと全学年という2つの機会で、学校が組織的取り組んだことが、大きなポイントです。

2つ目は、「内発的改善力を高める学校変革」という名称が示唆しているように、外から言われてやったことではなく、教員が自発的にやろうとしたことを学校内に拡大していった点です。ただし、教員に本当にやらされ感はなかったかは、聞いてみないとわかりません。

おそらく、研修のビフォー・アフターでの子どもの変化を実感することが、教員の内発的な動機づけとなって、さらなる授業改善が進んだものと推察します。

3つ目は、子ども実態や教員の取組を具体的に可視化して、確認したという点です。なんとなく、低学力層の基礎学力定着が課題ですよね、という程度の意見交換で終わらせることなく、「伸びてほしい子」に実際、どうアプローチして、どういう変化が見られるのか、具体的に確認できているのだろうと思います。

4つ目は、全体を見て集約したり、助言したりする機能(ここでは学校改善検討委員会)を活用していることです。教室という現場に密着した考察はもちろん重要ですが、少しそこから離れた立場から見た改善点なども重要でしょうし、各学年共通して取り組むべきことなどを共有化している点も優れています。

まとめると、この小学校では、授業という個々の柔軟な取組が要求される事柄について、教員に広い裁量は認めつつも、組織的に改善を進めていこうとしています。個々人の気づきと学校全体での気づきが相互に影響し合っています。

「タイト」なマネジメントと「ルース」なマネジメントをうまく組み合わせていると言えるでしょう。

この学校のことは本で読んだだけなので、分からないのですが、気になる点としては次の点があります。

■保護者や地域との情報共有について

児童数が少ない学校ではどうしても、レポートを読むと、その子どもが誰か分かってしまいます。そのため、おそらく、レポートの共有は校内にとどめている(学校外には出さない)のだろうと推察します。

個々の学年の情報を出す必要はないと思いますが、学年ブロックや学校全体がどのように取り組んでいるのか、そしてどのような成果と課題が見られるのかについては、保護者等と情報共有していくことも重要となるでしょう。理由は2つあります。

1つは、せっかくいい取組をしているので、学校外にも宣伝してほしいという思いから。学校がんばっているね、と保護者等から思われることで、教員のモチベーションはさらに高まるのではないでしょうか。

2つ目は、おそらく、伸びてほしい子の多くは家庭学習が弱いので、家庭にお願いすることや、家庭で見きれない場合は地域のボランティアなどの活躍も検討されるべきと考えるからです。

■学校内部では気づかないにいかに気づくか

この小学校単独の取組にとどまっていると推察しますが、別の小学校や中学校の教職員から見た気づきをフィードバックできる側面もあるはずです。学校をこえた研修でも、この事例のような方法はうまく活用できるのではないか、と思います。ただし、前述したプライバシーへの配慮なども考える必要はあります。

■経年での確認と引き継ぎ

その子や学年がどのようになっているのかは、経年で確認していく必要があります。こうしたレポート検討会のような場が、単発の取組ではなく、継続的に、改善点を洗い出し実行していくことが重要となります。

そのためにも、レポートや改善検討委員会の内容(書類化されている情報+書類化されていない情報)が翌年にも引き継がれているかどうかに注目したいところです。

この事例の直近の状況も含めて、今度訪問してみたいなあと感じました。