妹尾昌俊アイデアノート

妹尾昌俊アイデアノート~ステキな学校、地域、そして人たち

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教職員の駆け込み退職を考える

今日ニュースで、埼玉県の教職員が3月まで勤めると退職金が大きく(平均的には150万円)減るので、3月を待たずに1月末までに100人以上が退職するというのを耳にしました。ネット上のコメントをいくつか拾い読みすると、「(先生の行動としては)情けない」というコメントがある一方、「生活がかかっているし、もっともな行動」、「こんな制度をつくったほうが悪い」といったものもあります。さて、どう考えたらよいものでしょうか?

※僕はこのニュースについて報道以上の情報は特に持ち合わせていませんし、誤解などあればご指摘ください。

記事はこちら
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130122-00000137-jij-pol

背景情報として、埼玉県にかぎらず、人口が地方から都市へ急増したときに、都市部では子どもの数も増えて、教職員を増やしましたから、そのとき採用された世代が今50代になっています。これから大量退職を迎えますので、退職金の負担は自治体財政には大きな重しになっていることは想像できます。財政面の観点でいうと、この条例のように退職金を抑制していくことや、今回結果的にそうなったように早期退職を促すことは、効果があるだろうと思います。

一方で、当然、1月でやめられると、学校現場は少なからず混乱はするだろう、と思います。臨時の方などで穴埋めはなされるのでしょうが、個々の児童生徒の強みや弱み、場合によっては背景情報(家庭環境や障がいなど)を踏まえてどのような授業や接し方をしたらよいのかは、そう簡単に可視化したり、引き継いだりできるものではありません(引き継ぐ努力はもっと必要でしょうけど)。2、3月だけ臨時の方が担当するとしても、相当大変だろうと思います。

そうしたことは現場の教職員なら分かっているわけで、それを承知で途中で辞めると言っている方が相当数に上るということは、今回の退職金カットが教職員の行動へ強く影響している(お金は重い)ということが推察されます。辞めるほうも、後ろめたい気持ちを持つ方も多かったことでしょう。また、類推すると、辞めてなくて残っている教職員のモチベーションダウンにもかなり影響しているだろうと思います。数値化などはしにくいのですが、影響としては捉えるべきだろうと思います。

これら、現場の引き継ぎ不足による児童・生徒への影響や、退職金カットによる教職員のモチベーションへの影響について、もう少し考えてみましょう。

平たく言えば、児童・生徒には、「(この先生は)自分たちのことより、お金、生活のほうをとったのね」と思われるという影響です。それは短期的なところだけではなく、中長期的なものも考えたほうがよいと思います。例えば、先生によい思い出があり、同窓会でもこの先生に会いたい思えるかどうか。おそらく、途中で投げ出したと思われた先生は、同窓会には呼ばれづらいのではないかな、と思います。

別に金八先生のような熱血でなくてもいいんですが、損得なしに先生が子どもたちに向き合ってくれる、と子どもに思われているかどうかは、短期的にも、中長期的にも大きいと僕は思います。民間ビジネスならば、ある客は切ったり、諦めたりできますが、公教育では、そうはできません。しかし、2、3月で辞めてしまうということは、子どもたちと向きあうことを途中で辞めてしまうことです。場合によっては、この先生は僕たちを見捨てて退職してしまった、と思う子がいるかもしれません。

逆に、子どもたちに真剣に向き合ってくれる先生がいたとすれば、子どもたちにとって、その記憶は、その後の人生にとっても、なんからよい影響が続くのではないかと推測します。承認欲求と言いますか、自分を受け止めてくれる人がいるというのは、家庭、あるいは地域社会や友人関係でそれがだんだん難しくなっている昨今、大変大事なことではないかと思うのです。

僕は今回辞める方を真摯ではない、と批判するつもりはありませんが、そう子どもに感じ取られるリスクがあるということは、重く見るべきだと思います。教員は聖職だからお金で行動するなとか、言うつもりも全くありません。ただ、子どもとの信頼、それも損得感情の入りにくい関係性で成り立っているしごとなので、真摯さが通常のビジネス以上に大事であり、それを犠牲にしかねない影響をよく考えたほうがよいと思います。

また、いったん、学校の先生ってそんなものなのね、と子どもたちから見られると、それはその先生以外にも波及しします。もちろん、今回辞められる先生も含めて、よのなか多くの方は、一生懸命、児童・生徒と向き合っているわけですが、その努力に水をさすところが、僕としてはなんと言いますか、もう少し何とかならないかなと考えています。

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