妹尾昌俊アイデアノート

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妹尾昌俊アイデアノート~ステキな学校、地域、そして人たち

元気な学校づくりと地域づくりのヒントをお届けします!

日本人は世界一スマート!?と喜ぶ一方、その背景を考える

今日の朝刊1面には、OECDが実施した国際成人力調査で、日本が24か国・地域中、世界1位だったことを報じる記事が載っていた。15~65歳の人を無作為抽出の上テスト、3つの観点で職業的に必要となるスキルを試したところ、読解力と数的思考力で日本は1位、IT活用力では10位。テストが原則パソコンで行われるため、それを拒否った人(紙で受けた人)を除いた順位だと、IT活用力も日本は1位だという。要するに、日本のオトナは世界で一番スマートだということが垣間見れたということらしい。

下記の文科省の調査結果が一番詳しいと思う。設問例もついているし。

〇新聞記事(毎日新聞より)http://mainichi.jp/select/news/20131009k0000m040025000c.html
文科省発表資料http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/Others/1287165.htm

少しネット検索してみたところ、素直に喜ぶ論調や、学校教育や職場での人材育成の効果と肯定的に見る見解がある一方、ITについての課題が残っていること、とりわけ、日本ではOECD平均よりも多くの人がITを使わず紙のほうがよいと回答をした人が多かった点が気になる、という記事もあった。

たかが1回のテストの話ではあるが、この調査からヒントを得られること(インプリケーション)を僕なりに少し分析してみる。

1.日本のオトナの多くは常識的な受け答えができる。
このテストは目的や設問例からみても、国民のスキルを試すことに主眼が置かれている。きちんと誤解なく文章を読みとれるかとか、基礎的な計算や図形の発想がでるか、ITでメールやスケジューラーを活用できるかなどだ。つまり、考える力とか、PISAでいうところの応用して活用する力は試されていない。なので、「日本人が世界一スマートか?」と言われると、このテストだけでは分からない、というのが正直なところだろう。

要するに、ある程度はできて当たり前のスキルを試すテストで世界一平均点が高いということは、世界でもっとも常識的な受け答えができるオトナがそれなりに多い、ということを意味する、と思う。これは実はすごいことだし、グッドニュースだと思う。

2.仕事上、少ない人員や人件費でも一定のアウトプットが期待できる。
1.を踏まえると、仕事上、正社員だろうが、非正規社員やアルバイトだろうが、ある程度のスキルをもっている人は多い国である、ということが推測される。なので、職業経験を積んでいくと、コンビニや飲食店で、アルバイトであっても貴重な戦力となり、たとえばPOS(何が売れたかなどのデータ)をもとに発注できたりする。しかし、一方で、そうした基礎的なスキルをもつ人がたくさん国内市場にプールされているので、人件費が安くても調達できてしまう、ということにもなる。

3.事業環境の変化や産業構造の変化に日本は対応しやすいのかもしれない。
1.や2.を踏まえると、わたしはデスクワークはまったくできません、といった人は日本には他国と比べると少ない。接客を任せても、ある程度常識的に対応して、お客様を変にイラつかせたりはしない。なので、たとえば、従来は工場や土木現場でデスクワークとは縁遠かった仕事が仮に減っていって、ホワイトカラー的な仕事が増えたとしても、順応しやすい人がそれなりに日本は多い、ということだろう。

今後日本の産業がグローバル競争の中でどうなるかはビッグイシューだが、そうした人材の強みがありそうだ。また、日本はこれから人口減少で労働力人口も趨勢的には減っていくが、若者で無職の人や出産などを機に仕事を辞めた主婦層らもスキルは国際的に見ても高く活用できる余地が大きい、ということかもしれない。

4.学校教育への批判は本当に当てはまっていたのか?
日本では、小学校から大学まで、あらゆる学校教育、とりわけ公教育は強い批判に長年さらされてきた。いつの時代も、「今の学校教育は悪い、改革だ!」という主張がなされてきた。特にゆとり教育への批判は、いまもって根強い。このテストだけで検証できるものではないが、日本人の15~64歳のスキルが世界的に見ても高水準ということは、学校教育が貢献した部分も大きい、と考えるほうが素直な解釈だろうと思う。

先に引用した文科省のレポートでは、今回のテストの年齢5歳刻みの結果が出ていて、興味深い。読解力も数的思考力もIT活用力も、20代後半や30代が高得点だ。20代前半だって、OECD平均と比べたら相当高い水準にある。ゆとり世代として批判されているのは主には20代後半だと思うが、実は彼らの世代がスキル的には高い、それも批判しているおっちゃん・おばちゃん世代よりもはるかに、という結果が明らかになった。

もちろん、先ほど述べたとおり、このテストは基礎的なスキルを試すものなので、たとえば、仕事で自ら企画したり、指示待ちじゃなくて考えたりする力はどうなのかは分からない。ただ、基礎的なところをきちんとできる、というのは褒められてよいことだと思う。個人的には、就職活動が厳しくて、SPIなどで基礎的なスキルを試されてきたのがおそらく今の35歳以下の世代だから(SPIが流行りだしたのはたしか2002年くらいじゃないかな?)、という背景も強いと思う。いずれにせよ、基礎力がかなり鍛えられているというのは、就職活動や就職後に職場でトレーニングされた要素も強いだろうが、学校教育も基礎・基盤となっているはずなので、学校教育がすごく悪かった、という評価は下しにくいのではないだろうか。

僕の以上の解釈は合っている部分とそうではない部分があるかもしれないが、今回のテストひとつをみても、いろいろな背景を推察することができ、これまでの世の中の論調やなんとなく抱いてきたイメージが、実は間違っていたのかも、という考えるきっかけになる。