妹尾昌俊アイデアノート

妹尾昌俊アイデアノート~ステキな学校、地域、そして人たち

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歴史好きはウツに強い気がする

とくに科学的な根拠などがあるわけでなく、僕の勝手な仮説なのですが、歴史好きはウツに強い(なりにくい)気がします。以前の記事に書きましたように、ここ1年くらい妻が躁鬱(あいかわらず、難しい字だし、症状も字のごとし)で、それなりに考えるのですが、僕も仕事はタイヘンなところはあるし、公私でそれなりに悩みもありますが、うつにはかかりにくいと、自分も妻も感じています。(かからないというわけではないので、かかったときは暖かくお願いします。。。)

ツレがうつになりまして。

いくつか要因があって、単なる性格の違いというよりは複雑だと思います。ひとつは「自己肯定感」が強いかどうか。自分はダメなやつだと思う傾向が強いと、うつにもかかりやすく、他方、他人がどう思うが知ったことない、自分の軸が大事だと開き直れるタイプは強いように思います。これはたぶん子どもの頃からの経験が大人になっても響きます。たぶん僕の場合は、親と祖父母に相当甘やかされて育ったので、それは性格上弱い側面にもなりますが、愛され感を強くもっています。また、小学校のときは軽いいじめにもあって、あまり明るくなかったけれど、中学からは周りの人に恵まれ、それなりに好き勝手でき、アホな失敗もありましたが、まあなんとかなるか的な経験も、自己肯定感を強めているかもしれません。

自己肯定感については、品川女子学院校長の漆さんのエッセイがわかりやすい解説でした。→自己肯定感があれば、 どんな困難にも負けない 自立した子に変わる!

もうひとつは、冒頭にも書いたように、歴史好きかどうか。歴史はひとつの材料であって、もう少し広げて言うと、多くの人生を見てきているかどうか。(といっても、子どもや若い人は経験が少ないので、歴史などから勉強できるという意味です。)

最近読んだとてもいい本で、ライフネット生命の会長をしている出口治明さんの『仕事に効く教養としての「世界史」』では、本文も素晴らしいのですが、「おわりに」も感銘を受けます。以下、少し引用。

 ある生命保険会社に勤務していたとき、子会社への出向を命じられました。
 もう二度と、生命保険の世界には戻れないと思い、遺書のつもりで『生命保険入門』(岩波書店)を書き、生命保険への思いを断ち切りました。けれども、別に自分が不運だとは思いませんでした。
 小さいときから歴史の本を読むのが好きでした。歴史にはさまざまな人間が登場して、時代や自然災害や流行病などの大波にもまれ、社会のトラブルで傷つきながら、知恵をつけ、戦ったり愛しあったりしながら、今日まで歩き続けてきた姿が描かれています。
 歴史を見ると、自分の好きな仕事をやって順調に出世するなんて奇跡に近いことです。・・・人生は青写真どおりにはいかない、運や偶然に振り回されてむしろ当然なのです。
(p331)


歴史好きには、遺跡やモノに魅かれるという人もいるかもしれませんが、その時代に生きた人間に魅かれるという人が多いのではないでしょうか。残念ながら、学校の歴史教育ではそのあたりがうまく伝わるものになっていないかもしれませんが、大河ドラマとか好きな人はたいてい、その人の生き方や考え方、運不運のなか試行錯誤する姿に感銘を受けて、歴史好きになります。

で、歴史好きだと、ほんといろんなことが起こって、人の幸せは本人に聞かないとわからないけれど、ほんとこの人は幸せだったのか、よくこんななか頑張ったな、などと思える人がたくさん出てきます。たとえば、足利義政なんて、時代がもっと平和だったら、文化度は高かったし、よい将軍だったかもしれませんね。また、日本史上ナンバーワンかもしれない恐妻と一緒の生活はどんなだったのでしょうか。(怖すぎて、銀閣に引きこもってしまったのでしょうか?)

また、出口さんも書いているように、時代が悪かった、人のめぐり合わせが悪かった、運が悪かったというシーンもたくさんあります。信長が天下をとりかけたのは、彼の実力だけではありません。信長の出身の尾張(今の愛知県)が、京都という一大政治・経済拠点に比較的近かったこと、しかも、農業・商業の国力が相当高かったこと(太閤検地のときのデータや朝廷への寄進額でわかる)です。よく言われますが、信玄と謙信が隣に生まれてなかったらという話もありますが、そもそもその両国は、京から遠いハンデがありました。信長と同じかそれ以上に京からの距離と国力で恵まれていたのは、越前(福井県)の朝倉氏ですが、残念ながら、それを活かすことはできなかったので、やはり信長はすごいということでもあるのですが。

さらに、面白いのは、ポンペイウスカエサルしかりですが、必ずしも若い頃に頭角を現していたほうがずっと強いとは限らないこと。また、当時の(またはのちの)権力者でもこんなことで喜んでいたのか、悩んでいたのかというシーンも興味深いです。たとえば、秀吉は嫁さんのねねに浮気を信長のチクられましたが、信長からねねにあてた人情味ある手紙が残っています。

(若いうちから軍神的な強さ、きっと性格もよかったポンペイウス

ポンペイウス


好きなので、ついつい、あれこれ書きましたが、要は、人間悩むときは誰だって悩むし、悩んでも解決しない世の中の流れのときもあるし、でも変化や時の環境をうまく掴まれる人とそうではない人もいるな、と感じるなか、少し自分の悩みや生き方も相対化できると言いますか、まあ、あの時代に比べたらラクとは言いきれないが、あの時代の人もタイヘンだったしなあとか、考えることができるようになると思います。

それで、妻には歴史本を薦めていますが、長いのはめんどくさいということで、ダイジェストを僕が伝えております。が、細部が面白いんだよな。あと、マンガで優れた歴史ものもたくさんありますから、そちらから入るのもいいなと思っています。


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