妹尾昌俊アイデアノート

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妹尾昌俊アイデアノート~ステキな学校、地域、そして人たち

元気な学校づくりと地域づくりのヒントをお届けします!

コンサルに惑わされないための必読書「申し訳ない、御社をつぶしたのは私です」

ソーシャルなこと

それにしても絶妙なタイトルをつけたものだと思います。アメリカの経営コンサルタントが、「ぶっちゃけ、コンサルなんて、(うまく使わないと)害ばっかりで益なし」と正直に告白した一冊。わたしは、リサーチものが多いとはいえ、前職はコンサルだし、今は一時的に使う側にいるけれど、”ああ、わかる~”と声をあげたくなる個所は随所にありました。メインは民間コンサルを念頭に書かれていますが、本書のメッセージは、行政や学校関係にもほんとよく当てはまると思います。

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。/大和書房
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本書の主張はいたってシンプル。例えば、人事評価の目標管理シートを埋めたり、評価会議で社員報酬を散々議論したりするのに使う時間があれば、もっと部下の話を聞くとか、人と向き合う組織になったほうがよい、というもの。章のタイトルを読めば、だいたいの内容をつかむことができると思います。
○「戦略計画」は何の役にも立たない
○「数値目標」が組織を振り回す
○「業績管理システム」で士気はガタ落ち
○「ベストプラクティス」は”奇跡”のダイエット食品 など


私たちは企業経営の専門家や経営コンサルティングファームのせいで、ビジネスというのは論理的なものであり、すべて数字によって管理できると思い込んでいる。モデルや理論に従えば成功への道筋が示されると信じてきた。

ところが、企業がさまざまなモデルを導入し、数値データに従って意思決定を行っても、期待していたような成果は決して得られない。なぜなら、ビジネスは理屈どおりにはいかないからだ。

・・・ビジネスとはすなわち「人」なのだ―非理性的で感情的で気まぐれで、クリエイティブで、面白い才能や独創的な才能を持っている人間たちのことだ。そんな人間が理屈どおりに動くはずがない。
私が本書によって訴えたいのは、これ以上、職場から人間性を奪うのはやめるべきだということ。(p23)。


また、次の個所の記述などは、どのような組織でも、ぎくっとくる一節ではないでしょうか。

日々のふれ合いのなかで指導やフィードバックを行ってこそ、社員の業績は向上する。上司と部下(そして同僚間)のコミュニケーションこそ、業績の向上には欠かせない手段だ。現行の業績管理システムは、ただ書式に記入し、スコアを計算し、ランク付けを行い、カネを分配するだけで、人間関係をおろそかにしている。
多くのマネージャーは、プロセスどおりに考課を行い、部下の長所と短所を評価してアクションプロプランを示せば、それで管理職としての務めは果たしたと思っている。(p160)


わたし自身を反省しても、本書を読んで次のことを考えました。(個々の説明をするとさらに長くなるので、ちょっと業界用語が多くて、すみません。)

①コンサルに振り回される=フレームワークや指標に振り回されていないか?
ファイブフォース、シックスシグマ、バランススコアカードなどなど、コンサルタントフレームワークや理論が大好きです。多くの場合、その業界の経験や知識でクライアントは優位なので、コンサルタント側がそれを跳ね返す武器として、フレームワークや理論は活躍するのです。でも、本書で述べているとおり、フレームワークや理論の適用自体が目的となってしまっては、本末転倒です。

わたし自身は、それなりに、業績評価やバランススコアカード(BSC)の導入に携わったことがあります。その中で、印象的だったのが、BSCの第一人者とも言える先輩が、「これは業績評価ツールというよりは、組織の中で戦略をコミュニケーションするためのツールだ」と強調していたこと。つまり、安易に組織の査定やましてや社員のボーナスに影響させるような評価ツールとして使うのではなく、組織の戦略ストーリーと戦略の進捗状況を指標(KPIと言います)を使って見える化して共有しやすくすること。役員会議などで戦略マップやKPIの推移を見ながら、なぜうまくいっているのか、あるいはうまくいっていないのか、よく議論していくことが大事だ、という話です。

本書は、前述のとおり、もっとマネジメントに人間性やコミュニケーションを取り戻すべしという主張ですが、フレームワークや指標の活用と、コミュニケーションの活性化は、本書が言うほどは両立しないわけではない、とわたしは考えています。

とはいえ、運用が難しいのは確かです。わたしの得意な(そして今は当事者でもある)行政の分野では、さまざまな場面で、指標を使うことが金科玉条的になりつつあります。しかし、その指標なり目標管理の仕組みを、うまくコミュニケーションに使えているか?と言えば、課題もあるところが多いのではないでしょうか。

自治体でも90年代後半から行政評価がすごくはやりまして、事務事業ごとに評価しているところも多いのですが、ほんと手間がかかります。それで、シートを埋めるのに一生懸命になって、肝心の事業や政策の議論ができなくなると、もったいないですよね。

②大事なのはソリューション(解決策やそのツール)か?
本書で述べているとおり、大事なのはソリューションよりも、問題や課題の発見と特定です。課題が的外れだと、ソリューションも違ってきますから、当たり前ですけど。

しかし、当初コンサルにある問題の解決を依頼して発注したのだけれど、調査していくと、別の問題のほうがより深刻であるとか、本質的であると(コンサル側かクライアント側が)気づくケースもかなりあります。そんなとき、どうするかは大きな分岐点になります。

③やっぱり自分の頭でよく考える人・組織はコンサルもうまく使える
本書では、コンサルを使うなと言っている本ではありません。あやしい提案やコンサルテーションに惑わされるな、うまく使えという本です。

問題をさらに悪化させているのは、多くの企業ではコンサルタントを使って分析や計画を行うため、コンサルタントがプロジェクトを完了して去っていくと同時に、そこで蓄積された知識もすべて出て行ってしまうことだ。自分たちで頭を絞って考えたわけではないので、あとに残ったのは75ページものパワーポイントの報告書だけ。そんなものはほとんど誰も読まないし、ましてや内容を理解することもなく、プリントアプトしたらおしまいだ。
やはり、自分たちで何週間もかけて分析し、結果をまとめ、結論を出したことから学ぶのと、ただ報告書を読んで学ぶのとでは、雲泥の差がある。(p60)


どこも(日米)あんま変わらないんだなあ(日本のほうが報告書はもっと厚そうだけど)と思いました。