(読書ノート)学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話
言わずと知れたベストセラー、もうすぐ映画にもなるそうですね。坪田信貴さんの『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(タイトル長い・・・)は、とても面白いし、子育てや学校教育のことを考え直すヒントがたくさんあります。これは教育関係者のみならず、教育ママ・パパは買いですよ(だから売れているのか~)。 ※最近文庫版も出ましたが、勉強法などの個所がカットされているようなので、こっちがよいでしょう。 「さやかちゃんが慶應に行ったら、周りのみんな、マジでビビるよ。で、スゲーってなる。でもね、何より、絶対無理!って言われることを成し遂げたことが、自信になるんだ。それが大人になってからも、大事なことなんだ」(p.31) 本書を読むと一念発起したさやかちゃんが、友達を遊ぶ時間や寝る時間も削って猛勉強する様子が描かれているのですが、このモチベーションの背景には、自分を認めてくれる人、見ていていてくれる人がいること、そして、意外と勉強してみると面白いな、というところがあったからだと思います。 偏差値が上がったは結果であって、偏差値が上げたいから勉強が進んだ、ではないと思います。 本書では勉強法のコツや心理学を応用したコーチング法みたいな話も出てくるのですが、それらの多くは、すごく目新しいものではないし、あくまでも補助的なもの。やはり、本人の自尊心、自己肯定感を高めていけたことが大きいと思います。 塾のために徹夜の猛勉強しているので、学校の授業では寝てばかりのさやかちゃんの問題を、学校はお母さんを呼びつけて叱るわけですが、そのときに、この子は必死なんだから寝かせてやってくれ、って言える親なんて、そうそういませんよね。 ちなみに、表紙の子のことが気になり本書を手にした方も多いと思います(僕もそうです)が、本人ではなく、モデルさんです。さやかちゃん本人も下記の記事に登場しています、その後も面白いエピソードがありますね。
本書の主人公さやかちゃんは、高2のとき偏差値30、聖徳太子のことを「この女の子、超かわいそうじゃね?だって、この子、きっと超デブだったから、こんな名前つけられたんだよ。”せいとくたこ”なんて」と素で言ってしまう、面白く、そして中学受験の後は勉強をほとんどしてこなかった子。本書の著者で塾を経営する坪田さんらの強力なサポートのもと、本人すごく努力して、タイトル通り慶應に合格するまでのストーリー。
本書で明示はされていませんが、キーワードをひとつだけあげろ、と言われれば、「自己肯定感を高める」ということと僕は思います。本書でも随所でわかるのは、聖徳太子のことも知らないような、世間ではバカ呼ばわりされる子のことを、坪田さんは「素直でこれから伸びていける子だ」、「とってもユニークな発想ができる子だ」と褒めるのです。さやかちゃんの珍回答の連続に、坪田さんの返しやツッコミもまた面白い、このあたりは本書を読んでのお楽しみです。
そして、こう語りかける。
著者はこうも述べています。「何より大事だったのは―もちろん、成績も上げたいわけですが―学ぶこと自体がおもしろいんだぜ、というメッセージを発信し続けることでした。」(p.113)
本書でもうひとつの重要なキーパーソンは、なんと言っても、さやかちゃんのお母さん。お母さんの姿勢にも、さやかちゃんの自己肯定感を保つ、高めるということが随所にあらわれます。世界がみんな敵に回っても、この子の味方で居続けるという姿勢は、僕も親として考えさせられました。
そして、坪田先生やお母さんと対照的なのは学校の対応。成績が悪く、身だしなみも眉唾な子に対して、クズ呼ばわりする先生もいたそうです。慶應に行くことも「そういうバカげたことをいまだに言い張っています」と言っちゃう。こうした点も考えさせられます。