妹尾昌俊アイデアノート

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(読書ノート)社会を変えたい人のためのソーシャルビジネス入門

子どもが病気のときに保育園は預かってくれない、親にも頼れない。仕事もたくさんあるし、どうしようか、テンパってばかり。そんな経験をもったことのある人は僕だけではないと思う。本書「社会を変えたい人のためのソーシャルビジネス入門」の著者の駒崎弘樹さんは、病児保育という社会課題にNPOという立場で10年以上前から取り組んでいる、まさに社会を変えてきた一人。

その駒崎さんが、ソーシャルビジネスを起業し、経営してきたこれまでのエッセンスを惜しみなく披露してくれている、サービス精神満点の本が本書だ。

特に印象深かった箇所をメモすると、社会課題解決を図ることがソーシャルビジネスの使命だとしても、どうやって課題や問題を見つけるのか?著者は「何となく心に刺さっている棘」に会いに行くことを勧める。

ニュースで見て、新聞で見て、友達に聞いて、自分で体験して、何となく許せなかったこと、納得が行かなかったこと、悲しかったこと、心動かされたこと。こうした棘に、実際に会いに行けばいいのだ。・・・現場に飛び込むことで、僕たちの心はさらに揺さぶられる。そしてもっと知りたくなる、あるいはさらに深い問題意識が生み出されてくる。(p34)

このあたり、「何となく」とわざわざ書いているところも共感できる。つまり、はじめからすごく大きな問題意識や明確な目標があることが必要なわけではない。徐々に深めていけばよい、という話。

そして、寄付や助成金を得るために自分の事業(または事業プラン)をPRするときも、なぜ自分はこの問題に立ち向かおうと思ったのか、パーソナルWHYをしっかり伝えないと、共感は得られない、といったノウハウも書いてくれている。たしかに、そうかも、と思った。

たぶん駒崎さんはとてもアツい思いをもった方だとは思うが、同時に彼はクールでもある。たとえば、ソーシャルビジネスの現場では、いろいろな問題に出会うことで、ついつい事業を拡大、多角化したいという思いが強くなる。しかし、事業収支や資金ぐり、人材などの点で不十分なときはその思いをぐっと我慢するべきだ、といった内容も書いている。「経営者が現場にいるうちは、多角化は時期尚早」(p220)などは、おお、ここで格言キタと感じた。

本書を読むと、ソーシャルビジネスや非営利組織ならではの苦労や工夫も少なくないが、起業や経営の点では、民間企業のこれまで言われてきたノウハウとも重なることも多いことに気づく。事業収支計画や価格設定、固定費などなるべく小さくスタートアップすること、人材の採用や育成に理念共有が重要なことなどは、かなり共通項だと思う。

読んだ感想としては、やっぱりいい組織は、当たり前と思われることをきちんと(愚直とも見れるような方法で粘り強く)やっているんだな、というものだ。

もちろん、純粋な営利事業とかなり異なることも書いてくれている。その典型は、「国に事業をパクってもらい、社会変革を拡大する」ことを書いた第6章だ。世の中、非営利組織の経営の本はいくつかあるけれど、こういうアプローチを包み隠さず書いた本はそうないのではないか?

以上ごく簡単だが、見てきたように、本書のメインはNPOやソーシャルビジネスを立ち上げよう、あるいはそうした事業の経営に悩みをもつ人が対象となっているが、起業全般や公共政策を考える上でもヒントが多くある。とてもお買い得で、心にも頭にも残る一冊だ。


社会を変えたい人のためのソーシャルビジネス入門 (PHP新書)/PHP研究所
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