妹尾昌俊アイデアノート

妹尾昌俊アイデアノート~ステキな学校、地域、そして人たち

元気な学校づくりと地域づくりのヒントをお届けします!

学校と地域との連携の現場から

先日、僕のふるさとに近い、徳島県東みよし町にて講演しました。東みよしでは、コミュニティスクールという地域と連携した運営に長年取り組んでいて、全国的にも注目されています。

テーマは地域づくり、学校づくり、人づくり。まあこれだと、ばくっとし過ぎていますが、首長部局と学校・教育委員会との連携についてです。でも、こう書くと非常にカタイですね。学校の守備範囲が変わってきたという話でもあります。


学校・教育委員会は、政治的な圧力、影響力からはある程度自由でなければならないということで、首長部局(住民課、高齢福祉課、子育て支援課、産業振興課など)とは、従来はかなり明確に役割分担してきました。大雑把に言うと、学校のことはその学校と教育委員会に任せてくれい(首長部局は口出すな)というわけですね。

しかし、教育委員会制度も大きく変わりましたが、首長部局と学校・教育委員会は、明確に役割分担して、お互いのことは知らんよ、ではいかなくなってきました。なぜなら、社会や家庭、それに学校の状況が変わってきたからです。お互いにもっている情報を必要な範囲で共有したり、一緒に取り組んだりしたほうが効果的なことも多くなってきました。

具体例をいくつかあげましょう。

保育園や子育て支援の中で(=これらは子育て支援課などの首長部局のお仕事)、発達障害の疑いがある子に気づいたとします。親とも会話する中で、こういうことに気をつけたら、この子は落ち着くとか、こういうアプローチは嫌がるなどの情報が保育園や子育て支援課には集まるかもしれません。

しかし、その子が小学校に上がったら、一度リセット。そうした情報は学校に十分に伝わらず、結果、1年生の担当は準備不足だったり、またはじめからノウハウをためていかねばならないということもあります。情報の遮断・連携不足はもったいないことです。

もうひとつ別の例。予防接種にも来ないし、子育て支援のイベントや場にも来ない。ここの家庭の子は大丈夫だろうか?と子育て支援課の職員としては感じているケース。そうした家庭も、小学校にあがると、少なくとも子どもは来ますし、保護者と多少でも話す機会はもてます。もしこの家庭の親が、事情があり子育てに悩みが多かった場合、学校で、または学校を介して、子育て支援に入るという手があります。

こうした背景もあってか、東みよし町では、0歳から15歳まで子育て支援するというビジョンを掲げています。具体的には、特に配慮や支援が必要な子について、支援ファイルという情報を関係者で共有できるようにする準備を進めています。

似た例は他にもありますが、とても大事な動きだと思います。同じ徳島でも、上板町を数年前ですが、訪問した際、教育委員会、学校(特に生徒指導担当)、保健師と町の福祉部署、地元医師、親支援の民間団体などが協議会をつくって、1つの機関では支援しきれない実際のケースを相談するケース会議を頻繁に設けていました。

また、小学校などを通じて、子どもを介することで親同士、あるいは地域の間の顔見知りが増えるということは多々あります。例えば、日ごろは猛烈サラリーマンな親父たちが、夏休みに子どもに肝試しを体験させたいと集結。平日はメールで連絡をとりつつ、必要なものを集め、一気呵成にすごいイベントを仕立てる、なんて話もあります。

学校あるいは子どもを通じてできたコミュニティは、子どものためだけではなく、他にも活用・横展開する可能性があります。例えば、顔見知りが多いことは、防災上も治安上も安心を高めることでもあります。また、親父たちのネットワークが次はキャリア教育などに発展するかもしれません。

つまり、学校づくり→地域づくりに発展するケース。またはこれらを通じて、子どもも大人も成長したり、おもしろいなとか、この地域っていいなという感覚が高まっていったりする、人づくりにもつながるというわけです。

どうせなら、わくわくするような地域との連携を一層進めたい、東みよし町の関係者はそうおっしゃっていました。既にいろんなアイデアが出てきているようです。今後も楽しみでなりません。