妹尾昌俊アイデアノート

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(読書ノート)ローマ帝国人物列伝

やっぱり歴史は人物から入るのが楽しい

歴史をある人物に焦点をあてて眺めていくスタイル、列伝、人物伝ものは大好きだ。司馬遷史記だって人物伝(紀伝体という)、大河ドラマもそう(あくまでもドラマだが・・・)。学校の歴史の授業がつまらないという声が多いのは、たぶん、人物を眺める時間と手間をはしょるからである。信長でさえ、ほんのちょっとしか出ないし、楽市楽座などの用語だけ覚えてもちっとも面白くない。

この点、古代ローマと言えば、やはり塩野七生さんの『ローマ人の物語』は、タイトルの通り、ローマ人、人物に焦点をあていて半分小説風で引き込まれる。多くのファンがいるように、圧倒的な質。僕はこれにはまって、去年は古代ローマ遺跡巡りの旅をイタリアとトルコでやってきた。何か所もテルマエ、つまり風呂跡をたずねたが、日本と違って温泉旅館はなかった。。。

しかし、単行本15冊(文庫版で43巻)と長い。僕は時々読み返すけれど、時間がかかる(それはそれで幸せな時間かもしれないけれど)。

その点、前置きが長くなったが、本書、本村凌二さんの『ローマ帝国 人物列伝』は、300ページあるが、新書サイズ、1人物あたり数ページで大変読みやすい。これで、ローマ約1200年の要所要所をおさらいできるのだから、時間対効果は高い、お買い得である。

ローマ帝国 人物列伝(祥伝社新書463)

ローマ帝国 人物列伝(祥伝社新書463)

 

故郷の畳の上で死ねた人は少ない?

本書ではローマ史を代表する32人の生涯をダイジェストで紹介してくれている。俯瞰して印象的だったのは、故郷の畳の上で死んだ人は少ない、ということ。まあ、ローマなんで畳じゃなんだけどね(ベッドの上で言うべきなんだろうか?)。

ハンニバルと戦ったスキピオもローマを追放されたようなものだし、クラッススポンペイウスは殺される、カエサルが暗殺されるのは有名、アントニウスとネロは追い詰められて自殺、ローマの美術館に立派な騎馬像が残るマルクス・アウレリウスは遠征先で病死。もちろん、スッラ、アウグストゥスなど晩年が比較的平穏という人もいるけれど。

パクスロマーナ(ローマの平和)なんて言っても、やはりリーダーは壮絶、大変だったのねということが、死因を見ただけでも分かる気がする。

短所はあるが、長所がすごかった?

もうひとつ、リーダーたちの伝記を読むと、必ずしも人間的に「もうスバらしい!」、「最高っす!」ってわけではない。まあ、当たり前と言えば、そうだんだけど。現代の人の目線で見て偏見はあるけど、人間的にバランスがとれているとは思えない人もけっこう多い。たぶん、タイムスリップできても、友達にはなりにくい奴もけっこういそう。

内政が得意だけど、戦争はてんでダメな人物とか、将軍としては抜群だが、野心や猜疑心のために周りを殺しまくった人物なども登場する。また、とても優秀な実績を残したけど、後継者が決まらなかったり、後継者指名を誤ったりした例なども。

やはり、人間のやること、いろいろ難しいんだなということを改めて感じるし、自分の長所、強みを活かせるかどうかと、だれと組むかが大事なことも分かる。悪名高いネロも、若すぎたのかもしれないし、彼を補佐する人があと1人、2人いいのがいれば歴史は違っていたかもしれない。

思えば、2千年前も今もそう変わらないことのほうが多いのかもしれない。

誰のページが特によかったか

本書は興味のあるところをつまみ食いでもまったく大丈夫だ。僕が特に面白かったのは、アウグストゥス、ネロ、ウェスパシアヌス、ガリエヌスのあたり。ぜひ読んでみてほしい。