妹尾昌俊アイデアノート

妹尾昌俊アイデアノート~ステキな学校、地域、そして人たち

元気な学校づくりと地域づくりのヒントをお届けします!

研究指定を受けるからやるのか?

かなり面白い取り組みをいろいろ仕掛けている、ある中学校の校長先生からちょっと聞いた話。教員は「そうした取り組みは研究校がやるんじゃないですか」的な発言をすることがある。まあ、翻訳すると、「うちのようなフツーの学校ではやらなくてよい or できない」という意味である。

研究校とは、文科省都道府県の研究指定を受けているモデル校のこと。狭い意味では国の研究開発学校制度というのがあるそうで、学習指導要領の枠をこえていろいろ実践研究する学校のことを指すが、ここでは、これ以外の学校で国や県などからモデル指定を受けているところなども含めておく。

シンポジウムやセミナー、本などでも、いろいろな先進事例の紹介がなされているが、聞いている側は、「この学校(多くはモデル校)だからできたんだ」、「あの学校の校長だからできたんだ」と、”自分の学校ではむずかしいなあ”ということを、どんどん頭に浮かべる方も少なくないようだ。

こうした感想は、当たっている側面もあり、確かに、その学校ならではの熱量、あるいは文化、伝統がないと、大きなことはできないところもあると思う。校長をはじめとする管理職の役割が重要なのも確かだ。

一方で、とはいえ、一部でも自分のところに参考になることはあるよね、とも思う。「学ぶ」と「まねる」の語源は同じらしいが、どこかまねることができる部分はないだろうか。拙著『変わる学校、変わらない学校』ではこう書いた。

グッドプラクティスは、その学校独特の風土や文化、あるいは伝統がないと再現できない、と考えてしまうと、そこで思考停止してしまい、学ぶことが少なくなってしまうのではないでしょうか。そうした独特の要因が影響することは認めつつも、グッドプラクティスに至った、(多くの場合は)紆余曲折のプロセスの中から、他の学校にとっても共通して参考となるポイントや組織的な(属人的でない)要因に注目することが必要です。

 それで、今朝、ふと思ったのだが、「研究校だからやれる、できる」は因果関係が逆のケースもけっこうあるのではないか?

(写真は内容に関係ないけど、雨がつづく中の花 芙蓉)

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つまり、「研究指定を受ける→特色のある実践をする」という因果関係(パターンAと呼ぼう)ではなくて、「何かやりたいことがある、または既に一部分やっている→研究指定を受けてやりやすくする」(パターンB)という因果関係のほうが強いように思う。

パターンBでは、なにか問題意識ややりたいことがあって、あるいは既に一部行動しているのだが、教職員(or 教育委員会)の理解獲得や財源の確保のために研究指定をとるというパターン。

はじめの話に戻ると、「うちは研究校じゃないからやらならくてよい」というのは、どうもしっくりこない。パターンBでは、おそらく研究指定がなくても、やっていただろうから。

そもそも、この研究指定うんぬんは、民間企業の人間には、かなり理解しづらいと思う。企業では、よそと違うことをして、よそを出し抜いてナンボの世界だからだ。政府の補助金がないからできない、など言っているところは、たぶん競争力が弱い。

公立小中学校であれば、学校選択制をとっている場合などを除き、そう強い競争環境にはない。また、よそと違う特色がそんなに必要か?と言われれば、そうとも言い切れないかもしれない(同じ義務教育だし)。なので、企業とはかなり違う。しかし、やりたいことを見つけて、もっとやっていってもいいんじゃないかと思う(多忙化の問題もあるから、やめたいことはやめるを含めて)。

それに、パターンAよりもBのほうが前向きでいいんじゃないか、と思う。また、Bのほうが、モデル期間が終わった後も、発展させよう、広げようという動きを生みやすいのではないか。

もっとも、パターンAでうまくいく場合もある。はじめは何をやったらよいのやら的な状態だったが、研究指定を受けてやっているうちに、できることが見えてきた、という話は、実際、僕も聞いたことがある。だから、パターンAを否定するわけではない。現実のところは、やりたいことがあるからやる、やっているうちに、またやりたいことが見つかる、という相互の関係にあると思う。

そのあたりは、まさに「学習する組織」、「学習する学校」という像にも合うかなと思う。あなたの学校で何か行動したいことはないですか???

◎『変わる学校、変わらない学校』引き続きよろしくお願いします~

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