妹尾昌俊アイデアノート

妹尾昌俊アイデアノート~ステキな学校、地域、そして人たち

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【小難しいこと翻訳するぞ】カリキュラムマネジメントってなんなのさ?

新しい学習指導要領案、読んだ?

先日案が公開された次期学習指導要領では、小学校では英語が5年生から正式教科になり、3年生から外国語活動が始まったり、プログラミング教育が盛り込まれたり、教える内容は増える見込みです。

また、小中学校で「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」を、中学校では英語の授業は原則英語で行うよう求めるなど、授業方法の改善も盛り込まれています。

現場は大変ななか、期待を寄せられているカリマネ

新聞報道等では「教員の長時間勤務が指摘される中、学校現場の負担は増すことになり、『質と量』を両立させられるかが課題になる」(朝日新聞2017年2月14日)、「心配なのは、先生の多忙を解消できるかだ。ただでさえ、授業時間が満杯なのに、英語やプログラミング教育などを押し込んで消化できるか。」(中日新聞2017年2月15日)といった指摘が目立ちます。

これに関連して中教審の学習指導要領改訂の答申を取りまとめた無藤隆教授は、次のようにコメントしています。

「これ以上学校に求められたらパンクする」という現場の声を踏まえ、ポイントとなるのが「カリキュラム・マネジメント」だ。教員が個々で取り組むのではなく、連携し、学校全体の教育力を高めるというイメージだ。学校が引き受けてきた慣例を一度整理し、地域や家庭が得意なところをお願いし、メリハリと重点化が必要だ。
(朝日新聞2017年2月15日)

んーどうでしょう?新聞の限られた文字数ですし、これだけ読んでも、いまひとつピンとこない方が多いのではないでしょうか?

写真は今回のテーマには関係ありません。今日の食べた大阪のたこ焼き!写真のあとで解説はつづく。

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ぶっちゃけ、カリキュラムマネジメントってなんなの!!??

読者のみなさんにとっては、ちょっと退屈かもしれませんが、まずは新しい学習指導要領案の該当箇所を見ましょう。小学校も中学校も文言はほとんど同じ(児童と生徒のちがいくらい)、各2か所登場します。アクティブラーニングというカタカナ語が表面上は消えたのに比べると、大きな扱いと言えるでしょう。

※引用のあとに少し僕のコメントを入れます。

各学校においては,児童や学校,地域の実態を適切に把握し,教育の目的 や目標の実現に必要な教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てていくこと,教育課程の実施状況を評価してその改善を図っていくこと,教育課程の実施に必要な人的又は物的な体制を確保するとともにその改善を図っていくことなどを通して,教育課程に基づき組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向上を図っていくこと(以下「カリキュラム・マネジメント」という )に努めるものとする。

ふむふむ。長い文だなあ。。。。215文字!

どうも学校ではカリマネというのが必要らしいということは分かるが、抽象的な説明が続いて、わかりづらいよね。。。学習指導要領解説では懇切丁寧に解説してくれるのかなあ???そもそもこれを書いた文科省の人はほんとに腹落ちして書いているのかなあ?

 各学校においては,校長の方針の下に,校務分掌に基づき教職員が適切に役割を分担しつつ,相互に連携しながら,各学校の特色を生かしたカリキュラム・マネジメントを行うよう努めるものとする。また,各学校が行う学校評価については,教育課程の編成,実施,改善が教育活動や学校運営の中核となることを踏まえ,カリキュラム・マネジメントと関連付けながら実施するよう留意するものとする。

ほほう。学校で特色を出せと言っているらしい。特色って文科省や学校現場はほんと好きだなあ。。。そして、学校評価と関連づけよと。ん~、どういうことなのかなあ?謎は深まる。。。

なぜカリキュラムマネジメントはわかりづらいのか?

という感じでしょうか?関連する中教審答申にはもっと詳しく書いていますが、長くなるので、ここでは引用しません。

答申を読んでも、どうもこの、カリキュラムマネジメントというのは、実にわかりづらい。

なぜでしょう?

それは、組織マネジメントという言葉もそうなんですが、むずかしい言葉がドッキングしているからです。まずカリキュラムという言葉の意味、次にマネジメント。2つともやっかいな多義的な言葉なので、それがドッキングした言葉はもっとわかりづらい。

 

とまあ、文句ばかり言ってないで解読を、進めます。

カリマネの定義は論者により少しずつ異なる点もありますが、第一人者のひとりの田村知子准教授は「カリキュラムを主たる手段として、学校の課題を解決し、教育目標を達成していく営み」と説明しています。そしてカリキュラムマネジメントの目的は、各学校の教育目標の具現化にある、としています

※田村知子(2014)『日本標準ブックレットNo.13 カリキュラムマネジメント―学力向上へのアクションプラン―』、田村知子ほか(2016)『カリキュラムマネジメントハンドブック』などを参照。

カリマネのエッセンスは何か?

なるほど、文科省や中教審よりは短い文でスッキリしてますね。

ただし、この定義では広すぎて、さまざまな要素が入ってきてしまいますから、学校現場は混乱しないでしょうか?だって、課題解決とか教育目標達成とか言ったら、なんでもそうじゃないですか?たとえば、挨拶のしっかりできる礼儀正しい子を育てるという教育目標のために挨拶運動を毎日やります、としたら、これもカリマネで改善していくの??

そして、あたかもカリキュラムマネジメントが特効薬のように期待されても、学校がよくなるとは思えません。逆に、形だけのカリキュラムマネジメント、なんとなくやったふりをするカリマネ(これをぼくは”仮マネ(仮そめのマネジメント)”と命名いたします!)が広がっても、ダメでしょう。

いろいろ僕も悩みましたが、いまは、こう捉えたほうがよいと考えています。

読者のみなさん、どうですか?ご意見、ご感想は気軽にお願いします。

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  1. カリキュラムマネジメント(カリマネ)とは、まったく新しいことではなく、いまも多かれ少なかれどこの学校でも行っていること。ただし、これまで多くの学校では、教科ごと、あるいは学年ごとに年間計画を立てた上で、そのあとのことは、各教師が授業を行い、各教師で振り返るという個業(個人プレー)であることが多かった。
  2. カリマネでは、個業にとどめず、各教科で取り組んだことと教科横断で挑戦してきたことを教科単位や学年、学校全体で振り返って、教育課程に反映し改善していくことを強めていく必要がある。
  3. たとえば、あなたの学校で「子どもの表現する力を伸ばしたい」という目標があるとする。表現力をつけるために、国語ではどうしていたか、社会や総合ではどうしてきたか、それらの関連はうまくできていたか、ゲストティーチャーを呼ぶなど教育効果を一層高める工夫はなされていたかなどを振り返って、次年度の教育課程では具体的にどの点をもっと見直せばよいか、どのような点はよい傾向にあるので継続・発展させていくかなどを検討していくこと。
  4. カリマネの主たる狙いは、教育活動を組織的に向上させること(≒学校教育目標の達成の一部)にあり、多忙化対策ではない。とはいえ、カリマネを錦の御旗にして、各学校は教育課程を編成・見直すなかで、薄くてよい単元(さっと終わらせるもの)等を明確にしていくことも、多忙化の現状に照らすと重要となる。
  5. 学校評価を通じて、教育活動や教育課程を評価し、見直すこととカリマネが重なる点は非常に多い。ただし、次の点で留意が必要である。
  • 学校評価は教育活動だけでなく、学校の組織運営も対象としている点で、カリマネの主たる関心とは少しずれる。(ただし、カリマネの定義が田村准教授のように広い場合は、学校の組織運営もカリマネの検討対象となりうる。ややこしいなあ。)
  • 少なくない学校で、学校評価というものが、教職員、生徒等へアンケートをとるなどして、その結果を眺めてちょこっとコメントする程度に終始していることもあり、教育活動や教育課程の改善にまでは本気で踏み込めていない現実がある。
  • そのため、学校によっては、学校評価を衣替えして統合・発展させたものとして、カリマネを位置付けてよいと思われる。あるいは学校評価と一体的に取り組むものとしてカリマネのことは説明する。新しいものが純増すると教職員に思われては、多忙化した今日、現場ではまず浸透しないのだから。

★今日はここまで。では近いうちに!

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