妹尾昌俊アイデアノート

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妹尾昌俊アイデアノート~ステキな学校、地域、そして人たち

元気な学校づくりと地域づくりのヒントをお届けします!

【忙しい学校 どうする?】給食費はだれが集めるか?

4月19日に小田原市の小学校で給食費120万円あまりが集金作業中に盗まれた、というニュースを見ました。そこで、今日は、タイトルのとおり、給食費はだれが集めるのがいいのか?について考えてみたいと思います。

news.tbs.co.jp

この事件で見える、学校のフシギ

この事件では小学校側は被害者なのですが、こんなローテクでセキュリティもなにもない集め方をしているのか?と批判されても仕方がないと思います。

だれもが思いつくと思いますが、フシギなことは3点。

  1. なぜ銀行引き落としでないのか
  2. なぜPTAや元職員が給食費の集計作業にかかわるのか
  3. 「集金の際の人物確認など作業態勢を改善する」はぜんぜん改善策になっていないのではないか?

今回の事件の小学校のような方法は少数派だが、給食費を現金で扱う小中学校は約2割

文科省では「学校給食費の徴収状況に関する調査」という抽出調査を行っています。とりえず、小学校だけ触れると、平成24年度の状況によると、口座引き落としが73.5%で大多数。金融機関への振込が4.6%、児童が担任や事務職員へ手渡しするは9.0%、今回の小学校のようにPTAと連携して徴収というのも6.1%あります。いくつかの方法を併用(保護者が選択)も5.8%あるので、トータル約2割の小学校が給食費を現金で学校で扱っていることになります。中学校でも2割強が現金で扱っているようです。

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出所)平成24年度「学校給食費の徴収状況に関する調査」

http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/1341369.htm

 

ちなみに、この調査によると、給食費未納の児童は0.8%(中学校は1.2%)に過ぎません。これは保護者の意識や学校、関係者の努力によるものも大きいと思いますが、未納はごくごくわずかです。

 

さて、肝心の給食費についてですが、2種類の観点で分類できます。ひとつは、先ほどの調査のように集め方、徴収方法で分類する方法です。今回の事件を教訓にしてセキュリティの観点からも、また昨今大きな問題となっている教職員の負担軽減の観点からしても、口座引き落としが一番でしょう。

しかし、学校でよく聞くのは、給食費等の口座は通常とは別口座にしている家庭もあり、引き落とし日に残高不足でできない家庭も多い、という声です。それで結局督促の連絡などをしなければならず、ローテクだが、集金袋持参のほうが確実という声もあります。

とはいえ、両者でそれほど確実な徴収にちがいはあるのでしょうか?よく検証するとともに、再度メリット、デメリットをよく整理するべきだと思います。

というのは、やはり、現金を学校で扱うのは、いろいろやっかいな問題を引き起こしかねません。今回のような盗難は稀なケースでしょうが、紛失(子ども場合も、担任等の場合も)も起こります。

それから、教員や事務職員の負担という問題に加えて、ある小学校教員経験の方は次のことをお話くださいました。

金額が足りない児童は「誰かが取った(盗んだ)」みたいな事を言い出すことがあります。大概は、鞄の底などに落ちています。
また、親が勘違いで、少ない額を入れてしまうこともあります。勘違いなので、親はちゃんと入れているつもりなのに、教室では全額が無いとなると、場合によっては不信感が募ることにもなります。

このように、子ども同士や家庭と学校との間の不信感を招くことにもなりかねません。現金を学校で扱う方式は、弊害やリスクのほうが大きいと、わたしは感じます。

自治体が扱う公会計にすべきでは?

給食費の区分にはもうひとつあります。市町村などの自治体会計で扱う「公会計」なのか、その他なのかという区分です。公会計とは、税金など同じく、市町村の財布に入るということで、集めるのは、基本的には市町村の役割となります(学校が協力するというケースもあるでしょうが)。

公会計にして、保護者口座からの引き落としで自治体口座に行くという流れが、もっとも学校は給食費を扱わなくて済む方法です。

先ほどの「学校給食費の徴収状況に関する調査」によると、公会計にしている学校は28.2%と、まだまだ多いわけではありません。

では、多数の学校が採用している「その他」とは何かというと、学校長の名義の口座で集金・管理・支出しているところ(「私会計」)が多いと思われます。公会計と比べて、会計処理の透明性が低いのではないか、との批判もあります。

保護者目線の感覚的にもかなり変ですよね?給食費の多額のお金を校長口座に入れるなんて。

今回の事件の学校はそうかは知りませんが、学校の私会計を経由させず、PTAが集めて市町村の口座へもっていくという学校もあるそうで、この場合は、おそらく公会計に入るのかな。今回のようなことも起きかねませんし、本来のPTAの趣旨からもどうかと思います。未納の家庭がどこか、ほかの保護者が知ることにもなりかねませんし。

学校給食の集め方と会計の仕方がこうもいろいろあるのは、特段法律では定めはなく、判例でも公会計でも私会計でもよいとされている経緯があるためです。詳しくは、友人の柳澤さんの本が詳しいです。

本当の学校事務の話をしよう: ひろがる職分とこれからの公教育

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無用な現金のやりとりは、学校・家庭の関係にもヒビを入れかねない

先ほど紹介したある小学校教員経験者は、次のようにも話してくださいました。

お金が絡むことによって教師と保護者の関係がこじれるのがとても気になります。お金のことではなく、子どもの育ちについてのいろいろな話をしたい(しなければならない)相手なのに、それが難しくなります。お金を取り立てないといけないようなケースでは、子どもの育ちに関する話などがほとんどできないような関係になってしまいます。親と教師が同じ方向を向いて子どもを育てていけば、うまくいくかもしれないのに、給食費が理由でそれがうまくいかなくなってしまうのです。

こうした点や会計の透明性も考えて、やはり、口座引き落とし、かつ公会計化という方法が、一番いいように思います。

なお、給食費というのは、一食あたり300円前後の家計的にかなり助かる金額ですが、これは食材費・材料費です。調理員などの人件費や施設・設備費は市町村立学校であれば、市町村の予算で賄っています。だったら、給食費(材料費)も公会計で一緒にやればよいのに、と思います。

なぜ、公会計にしないのか。ひとつには、市町村側の手間が増えるからです。児童数等の規模にもよりますが、公会計にすることで、職員を3人とか4人とか増やすという自治体もあるようです。

しかし、見方をかえれば、その人件費相当の労力を、私会計では多くの場合、学校側が教職員の追加的な人件費なしで、担っていたということです。それで本当によいのでしょうか?

公会計化した先行例から学ぶ:塩尻市

地域や学校によって多少の状況のちがいはあるとはいえ、お金を集めてどう会計処理するかという話は共通点も多いはずです。先行事例から学びましょう、ということで、先日文科省でも発表していた長野県塩尻市教育委員会のプレゼンテーションと資料がたいへん参考になります。

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/uneishien/detail/1378184.htm

とくに重要なところを紹介します。公会計化したあとの業務の流れは大きくかわりました。次の図の赤字のところです。市の仕事は増えてしまいますが、学校側の仕事はゼロにはならないにせよ、相当減ります。

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出所)塩尻市教育委員会資料

 

塩尻市によると、「公会計にすると、未納が増える」という反対意見や懸念する声も多くあったのですが、ふたを開けてみると、未納はむしろわずかに減ったということです。これは、市職員が債権回収マニュアルをつくって頑張ったことや、児童手当から天引きすることができるようになったことも効いていると思われます。

 

もちろん、どんな方法にも課題はあると思います。しかし、いまの方法が本当によいのか、対症療法的な対策ではいけないのではないか、今一度振り返ってみるべきです。すでにさまざまな工夫や努力をしているところもあることですし。

 

senoom.hateblo.jp

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