妹尾昌俊アイデアノート

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妹尾昌俊アイデアノート~ステキな学校、地域、そして人たち

元気な学校づくりと地域づくりのヒントをお届けします!

【忙しい学校 どうする?】最新の勤務実態調査はこう読む

とても信頼性の高いサンプル数と調査方法

昨日、2016年度の小中学校の教員勤務実態調査が公表されました。先生たちの労働時間などの実態について結果が出ています。小中それぞれ約400校、小学校教員8,951人、中学校教員10,687人が回答した大規模な調査です。この規模の調査はほかにありません。正直、コストかけすぎと言いたくなるくらいです(回答する側の手間も含めて)。

しかも、他のアンケート調査などは、直近1週間何時間くらい働きましたか?などと記憶を聞くものが多いのに対して、この教員勤務実態調査では、30分単位で、どんな業務を行っていたかマークシートで記入していく形式です。つまり、記憶ではなく、記録をもとにしているという点でも大変貴重な、信頼性の高いデータだと思います。

懸念点や調査の限界もあります。2016年10月17日~11月20日のうちどこか1週間を選んで回答していますから、その選び方がどうだったのかのギモン。たとえば、さすがにとっても忙しすぎるときはこんな手間のかかる調査をやる暇もない、と考えた学校もいあるでしょうし、逆にちゃんと忙しいこと伝えたいと考えた学校もあるでしょうし。また、この時期は体育祭などの行事とぶつかり、それが調査結果へ影響している可能性です。さらに、対象はフルタイムの教員のみ。どうせなら、事務職員なども対象に加えてほしかったなと思いました。

小学校の約3割、中学校の約6割が過労死ラインを超えて働いている

それで本題の結果について。たとえば、次のように報道されており、過労死しておかしくない水準で実に多くの先生たちが働いている実態が明らかとなりました。

厚生労働省は、時間外労働が、1か月でおおむね100時間を超えるか、2か月から6か月のいずれかでおおむね80時間を超えた場合を、労災の基準となる「過労死ライン」に定めています。
この調査では、1週間の時間外労働が20時間を超えた教員は、小学校が33.5%、中学校が57.7%、また、副校長や教頭の管理職では、小学校が62.8%、中学校が57.9%に上りました。
いずれも、このまま1か月働き続けると「過労死ライン」に上るおそれがあるということで、文部科学省は「深刻な結果で業務改善などに早急に取り組む必要がある」と話しています。

NHKニュース 4月28日

文科省の発表した資料によると、ダイレクトにわかるのが、次のグラフ。

週65時間以上働いているということは、週に約25時間残業(時間外勤務)しているということですから、月100時間以上の残業ということなのですが、その水準の方が、小学校の17.1%、中学校の40.6%もいます。

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電通だけじゃない、という指摘は当たっている

参考までに、電通の新入社員の自殺が2016年に過労死認定されたことは大きな社会問題となりました。彼女の場合、残業時間が月130時間を超えていたことが報道されていますが、今回の結果をみると、月120時間以上残業している教諭は、小学校で7.2%、中学校で26.6%もいます。労働時間だけの問題だけではありませんが、学校も相当ひどい、と言われても仕方がない水準です。しかも、教員のほうは学内での勤務時間だけの数字。これに授業準備や採点などの自宅残業を加える必要があります。

ほぼ定時帰宅はゼロに近い

もうひとつ注目してほしいことは、週40時間未満や40時間~45時間未満という人が、小中とも5%もいないことです。平日すべて定時で終えると38時間45分ですから、定時前後という人はほとんどいません。

教員は超勤4項目といって、学校行事や職員会議など臨時的・緊急的な場合など以外は、校長は時間外勤務を命じることができない、ある意味では”手厚い”法制度となっているのですが、まったく形骸化している事実がわかります。

さらに、最初にのべたとおり、調査したのが今回は10月下旬~11月下旬であり、通知表などの成績処理は比較的少なく、諸手続きが多い時期でもありません。3月や4月など、一年でもっとも忙しい時期であれば、もっとひどい結果となっていたかもしれません。

なにに時間を使って、忙しいのか

では、なにに、そんなに忙しいのかというデータも大事です。これは次のグラフ。教諭についてです。

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授業がある程度あるのは仕方がないことですが、多くの時間を使っているところがほんとうにそれでいいのか、考えていく必要があります。もちろん、学校の学級の状況等によって、何がよいかなんて一概に言える話ではありませんけど。

で、見ると、やはりよく言われるように、中学校では部活の負担が重いことは明らか。平日は41分ですし、土日は2時間10分使っています。注意が必要なのは、これは平均であるということ。当然、もっと費やしている先生もいます。

しかし、同時によく見たいのは、部活だけではないということです。小学校であれば、成績処理、生徒指導(集団)、学校行事なども1日、30分前後~1時間使っていますし、中学校も、成績処理、生徒指導(集団)、学校行事、学年・学級経営などの時間が比較的長い。

成績処理とは、通知表の時期ではありませんので、主にはテストや提出物(宿題等)の採点などが該当します。いわゆる丸付けですね。

生徒指導(集団)は、集団なので、給食、掃除、登下校指導などが該当します。

よくセンセーショナルに言われる保護者対応は、平日7~10分と、全体から見ると比率はとても低いのです。ただし、繰り返しますが、平均のデータなので、ひどいケースはあるでしょう。

しかし、全体的にみると、傾向としては、丸付け、給食・清掃等の集団活動の指導、行事、学級経営、そして部活。このへんの改革・改善なくして、多忙化対策はありえない、ということを示唆しています。

長時間労働の実態を報道等されると、教育委員会や校長等は、すぐに「管理職のマネジメント意識を高めないといけない。よしタイムマネジメント研修の講師を呼ぼう」とか、「部活の休養日をせめて週1か2は入れたい」とか、「ノー会議デイやノー残業デイを推奨しよう」とかの施策に入りますが、はっきり申し上げて、上記のファクトを見るかぎり、労働時間を多く投下しているところに効く施策をやっているようには見えません

もちろん、いまの異常なまでも過労死ライン超えは、教員の増加などの抜本的な措置も必要となるように思います。学校に求めることを大幅に減らさないのであれば。同時に上記のように、いまたくさん時間を使っているところへの対策もしっかり捉えていかないといけません。的を射るという言葉があるように、どこが的の真ん中なのかを見るべきです。