『不安な個人、立ちすくむ国家』経産省若手官僚の資料にちょっと申し上げます
ネットで話題になっているらしい、経産省の若手官僚(20代、30代)のプロジェクトチームの方が作った資料(リンク先)。まったく外野からの率直な感想を書きます。
★資料はこちら
http://www.meti.go.jp/committee/summary/eic0009/pdf/020_02_00.pdf
★ネットで話題はたとえば、こんな感じ
togetter.com
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超多忙なお仕事をしながら、意欲的な挑戦だと思いますが、いろいろモヤモヤが募るペーパーでもあります。
一番は、So what?
何が課題なの?何が言いたいの?がどうも伝わってこない気がします。
たぶん最後の3.我々はどうするかがメッセージだと思いますが、1.2.とうまくつながっているかなあ?3.の根拠や具体的な政策メニューがもっとあったほうがよいかもしれません。
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まずは現状認識について。政策や社会システムが主たる原因であるものと、そうではないものがごっちゃになって議論されていると思います。
たとえば、母子家庭の貧困は、社会保障の問題であるので、政策論。しかし、老後にTVばっかという生き方してるよねは、個人のライフスタイルや価値観の問題であり、あまり社会システムは関係ない気がします。
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次に違和感があるのが、どうも人生には正解があるふうなテイスト、前提です。
「人それぞれでしょう」と言いたくなるし、「政府に人の人生について関わってほしくねーよ」という人もいると思います。
昔も、どうだったのでしょうか?そう単線的な、昭和な生き方ってカチッとしていたのでしょうか?
この資料のp10で奇しくも紹介されているように、正社員になり定年まで勤めあげる、というのは、1950年生まれ(=ぼくの親父と同じ年)でさえ、34%しかいなかったのです。これは、いまの朝ドラとほぼ同時代。出稼ぎのような不安定な職の人もいましたし、起業する人だっていました。
この資料では、昭和な生き方ではある程度、レールに乗っかれるものがあったけど、いまは、しっかりしたレールがなくて不安という前提です。だから、資料のタイトルが「不安な個人」とあります。
しかし、昔からレールなんて、そうたいしたものはなかったのかもしれません。
1950年生まれの人と、いまの世代のもっとも大きなちがいは、日本が人口増社会か、人口減社会かのちがいです。つまり、人口増の時代は、ある程度放っておいても内需は増えたから、仕事も、そして多くの場合、所得も増えました。しかし、いまはそうではない。だから、「不安」なんです。レールがあるかどうかよりも、経済成長しやすいかどうかのちがいではないですか?
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関連して、このペーパーは一見、多様な生き方を促したいふうな体裁をとっていますが、実は、中身はそうじゃない感じもします。そこが一番ひっかります。ぼくの誤解があるかもしれませんが。
たとえば、年金がもらえるからといって、元気なのに、仕事も地域活動もせずに、TVばかりの老後はダメ、という価値観が透けて見えますが、ほんとにそれでいいのでしょうか?余計なお世話だ、って言われちゃいますよ。
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インプットも大丈夫でしょうか?
エライ人たちとディスカッションしたと書いていますが、大学の先生らとの会話は、彼らは日常の業務のなかでも少しはできているはず。
本当に必要なのは、もっと当事者意識のある人や現場の人たちではないですか?
たとえば、TVばっか見ているふうな、あるいは図書館でぼけーとしているようなシニアな方にインタビューしたのでしょうか?彼らは、いまの生き方で幸せだ、って言うかもしれませんよ。あるいは、市町村の公務員にも聞いたほうがよいかもしれません。現場感が鋭いから。
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おっと、悪口を書きすぎましたかね。。。でも、この程度の批判にめげる方たちではないと思うので、期待を込めて批判的に書きました(読んでくれる人はいないかもしれないですけど。)
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