妹尾昌俊アイデアノート

妹尾昌俊アイデアノート~ステキな学校、地域、そして人たち

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新潟市民病院での過労自殺と学校の実態は、似ている

本日の毎日新聞で新潟市民病院の研修医木元文さんの過労自殺が報道されていました。ぼくと同じ年でもあり、なんとも痛ましい話です。

以下、記事から引用します。

2016年1月、新潟市民病院(新潟市中央区)の女性研修医(当時37歳)が自殺したのは過労が原因だったとして、新潟労働基準監督署は31日、労災認定する方針を決めた。

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亡くなった研修医は木元文(あや)さん。看護助手をしながら医師を目指して勉強を続け、2007年、新潟大医学部に合格。卒業後の13年から研修医となったが、15年4月に後期研修医として同病院に移ると、救急患者対応の呼び出し勤務が激増。

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木元さんの電子カルテの操作記録から月平均時間外労働(残業)時間は厚生労働省が「過労死ライン」と位置付ける80時間の2倍を超える約187時間、最も多い月では251時間に達していたと主張した。

 一方、病院側は木元さんが自己申告していた残業時間は月平均約48時間だったと反論。「電子カルテの操作記録の多くは医師としての学習が目的で、労働時間に当たらない」と説明していた。

headlines.yahoo.co.jp

学校の多忙化については、このブログでもたびたび取り上げていますが(今日はそのことで2件も取材を受けましたが・・・)、病院の現場(とりわけ本件のような救急医療)でも厳しい現実があるようです。

このニュースを見たとき、ぼくは学校と大変似た構造があると感じました。

  1. 過労死ラインをはるかに超えるような長時間労働が常態化していること。管理者は気づいていながらも、子どものため(病院の場合は急患の人がいる)ということで、人手が増えないという大変厳しい事情はあるにせよ、手をこまねていた。
  2. 本件の場合は研修医、学校の場合は、新任教員や常勤講師(非正規雇用)などの立場の弱い人たちに大きなしわ寄せがきていることが少なくないこと。(学校の場合も、新任等だけの問題ではありませんが。)なお、新任教員の自殺という事案はあります。
  3. 労働時間の正確な実態把握という意味で、管理者側と本人(遺族側)の主張が大きく食い違っていること。なぜ客観性のあるデータがないのか、あるいは、あったとしても食い違うのか?

 

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別の毎日新聞の記事によると、病院側は労使協定違反の長時間労働という点は認識していたということ、しかし、「急性期病院のため救急患者を受け入れざるを得ない」と釈明している、とのことです。

mainichi.jp

本件で市民病院の落ち度はありますし、それを批判することはある意味簡単です。しかし、

  • なぜこうした事態が起きたのか
  • なぜある程度は認識しながらも、改善しようとしなかったのか
  • いくら急患がいる現場だとはいえ、人の命を救う現場でなぜこういうことになるのか(学校の場合は、人の命の尊さを教える現場で)
    という点が問われなければならないと思います。

新潟市民病院のウェブページには理念として、次のことが書いています。

病院の理念は、[患者とともにある全人的医療]をめざすことで、ウイリアム・オスラーの言葉による「医学・医療は患者とともに始まり、患者とともにあり、患者とともに終わる」を基に、その信念を何時も全職員が忘れることなく毎日の業務に携わっています。

おそらく、この手の理念は、なにも病院であれば珍しいことではないと思います。学校の場合は、「患者」のところを「児童生徒」とか「子ども」と置き換えてもらえたら考えやすいと思います。

患者優先、子ども優先は、当たり前と言えば当たり前なのですが、だからといって、患者のため、子どものためということで、思考停止になっていはいないでしょうか?人手が増えないなか、ある程度の過重労働は仕方がないじゃないか、と問題を過小評価することはなかったでしょうか?

また、自殺にまで至る心境や背景は人それぞれではありましょうが、患者(子ども)優先で考えるあまり、自分を責めてしまうようなところもあったのではないか、と推察します。

患者(子ども)のためという気持ちはもちつつも、今のままでいいのか、もっと見直せるところはないのか、つらい思いをしている人はいないか、もっと自分も大事にしようと言っていってもよいのではないか、ということを考えることがもっと必要だと思います。

また、本件でも労働時間の認識の違いがあるようですが、これは教員の世界でもよくあります。正式な労働時間の記録が残っていないため、裁判等で何年も闘争するということが多発しています。ICカードやタイムカード、PCログなどでせめて、学校内にいる時間は記録しておくことは、本人のためにも、管理者のためにも、優先度の高い施策でしょう。

なお、本件のように、学習していた時間は勤務時間外という主張も、切り分けが難しい問題もありますが、ヘンなところも多いです。研修であれば、すべて労働時間外かといえば、そんなわけはありませんから。電通の事案でも、自己研鑽に使った時間は労働時間から控除するという方法で、実態よりも過少な労働時間申告が横行していた、との報道があったように記憶しています。似た問題は多くの組織であるのかもしれません。

もっとも、労働時間の把握があるからといって、それで長時間労働の削減に動くとは限りません。しかし、正確な現状把握なしに有効な対策が生まれるとも思いません。

以上のように、今回の新潟市民病院のこととを、ぼくは学校改善を図ろうとしている身としても、他人事とはとうてい思えません。もう失われた命は帰ってきませんが、どうすればこういうことが起きないようにできるのか、引き続き取り組んでいきたいと思います。

 

senoom.hateblo.jp

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労使協定を無視した残業が常態化していたことが毎日新聞の情報公開請求で明らかになった。同病院は協定違反を認めたうえで「急性期病院のため救急患者を受け入れざるを得ない」と釈明。
労使協定を無視した残業が常態化していたことが毎日新聞の情報公開請求で明らかになった。同病院は協定違反を認めたうえで「急性期病院のため救急患者を受け入れざるを得ない」と釈明。
新潟市民病院(新潟市中央区)で、労使協定を無視した残業が常態化していたことが毎日新聞の情報公開請求で明らかになった。同病院は協定違反を認めたうえで「急性期病院のため救急患者を受け入れざるを得ない」と釈明