妹尾昌俊アイデアノート

妹尾昌俊アイデアノート~ステキな学校、地域、そして人たち

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先生が足りない!?

先日のNHKニュースで全国の小中学校で700人以上の教員の欠員が生じているとのこと。教頭や教務主任がかねている例もあるということで、彼らはもともとたくさんの業務を抱えているので、その学校現場は本当に大変だと思う。

全国の公立の小中学校の教員の数が、ことし4月の時点で定数より少なくとも700人以上不足し、一部の学校では計画どおりの授業ができなくなっていることがNHKの取材でわかりました。これまで欠員を埋めてきた臨時採用の教員の不足が要因と見られ、専門家は「国や自治体は早急に実態を把握し、対策を検討すべきだ」と指摘しています。

・・・

NHKが全国の都道府県と政令指定都市、合わせて67の教育委員会に教員の定数とことし4月の始業式の時点での実際の配置状況について尋ねたところ、全体の半数近い32の教育委員会で定数を確保できず少なくとも717人の教員が不足していたことがわかりました。

このうち福岡県内では担当教員の不在で技術や美術の授業をおよそ2か月間実施できない中学校があったほか、千葉県内では小学校の学級担任が確保できず教務主任が兼務する事態も起きています。

(NHKニュース 2017年7月4日)

www3.nhk.or.jp

いくつか注意してニュースに接したほうがよいと思う。

この教員の欠員のことは、個々の学校ではとても深刻な話だが、全国的に見れば、まだわずかだということがひとつ。

全国の小中は3万校あるのだから、仮に1校1人の欠員が生じているとしても、700人は2.3%ほど。大多数の学校はこうなっているわけではない、ということには留意するべきだろう。

ただし、炭鉱のカナリアと見たほうがよいだろう。

 

ぼくが最近よく講演で紹介するデータとして、労働力人口の推移がある。

労働力人口とは働いている人の数に完全失業者数を足したもの。学生や専業しゅふ等は除く。つまり、仕事をしている人+求職中の人の数を指す。

この労働力人口、日本は、2000年頃からすでに減っているのだ。しかも、少子化の影響などもあって、今後も急激に減っていく。よく使うスライドを載せておく。2030年には2015年と比べて、約825万人も減る予想なのだが、これは福岡をのぞく九州各県の人口よりも多い。それほど大規模な人手不足が起きる。

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こうした労働力人口の減少のなかで、教職に魅力がなければ、「先生が足りない!」という事態は、全国的に拡大するだろうと思う。優秀な人は引っ張りだこだ。

しかも、ここ数年続いている大量退職・大量採用の傾向のなかで、20代、30代が増えている。当然、これから出産・育児等で休暇をとる人も(男女問わず)職場で多くなっていくだろう。すでにそういう学校も多い。

言うまでもないが、長時間労働が蔓延したままや、非常勤講師への待遇が低いままでは、先生のなり手は見つかりにくくなる


財源が問題となるが、上記の改善を本気で進めることが第一。第二に、定年や育児で退職した教員が再度活躍しやすくなることも、ひとつの方向性かと思う。すでに国家公務員については65歳定年に引きあげる検討がはじまっている。教員の世界も近くそうなるだろうと思う。

もちろん、シニアな方も様々だ。正直しごとがやりにくくなるという職場もあるかもしれないし、経験の豊富な方がいてくれて大助かりという職場もあるだろう。

また、育児等でやめた人も時短勤務などで復帰しやすくなることももっと必要だと思う。

しかし、いずれにしても、上記の労働力人口の未来予測を踏まえるならば、つぎはぎだらけの、対症療法的な施策ではダメだろうということだ。必要な教員の数はある程度見通しが立つ(そして育児休暇等をとる人数もだいたいの予想はつく)のだから、計画的に人を採用して、育成していくことが必要となる。

採用については、財政当局がうんと言うかというところが大きな課題だ。

育成については、教育委員会の施策、それから、なによりも学校現場でのOJTがどこまで実りのあるものかが課題だ。

最近よく学校の長時間労働、業務改善について講演、研修を各地でしているが、なぜ今のままの長時間労働じゃまずいのか、なぜ業務改善や働き方改革が必要なのかの腹落ちが当の教職員たちになれば、いくら研修しても効果は薄い。

多忙な職場では、人材育成や自己研鑽が犠牲となりがち、今のままじゃマズイでしょう?とわたしはよく問いかけている。また、今回のニュースは一部の事例、兆候とはいえ、先生の魅力をあげて、いい人にたくさん来てもらわないと、みなさんの仕事もしにくくなるでしょう、というメッセージも加えたいと思う。

もう一度言う。炭鉱のカナリアが鳴いている。

 

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変わる学校、変わらない学校―学校マネジメントの成功と失敗の分かれ道

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