【忙しい学校 どうする?】文科省幹部に提案したこと
決戦は金曜日~、と懐メロが聞こえてきそうでした。今日は、いま話題の文部科学省へ。「教員の働き方改革に向けた論点整理のためのヒアリング」という初等中等教育局(幼児教育~小中学校~高校までが主な所管ですね)の局長主催の勉強会でプレゼンする機会を得ました。
働き方改革といいますか、教員の多忙化対策、負担軽減に向けて、検討したいということのようです。およそ25の団体・個人から聞き取りを行っているということで、1人の持ち時間はプレゼン20分+10分の質疑応答でした。
〇〇会代表などですと、その団体で出席しますが、ぼくはピン芸人のようなものですから、1人ぼっちで、ちょっと寂しかったですね。先方は、審議官から、課長、企画官、補佐ら、20人くらいはいましたので(男性率は高かったなあ)。
事前にFacebookやオンラインゼミでも、また研修会や飲み会等でも、多くの方(それも現場の教員や事務職員、学校支援している方ら)に意見や生の声をもらっていたので、ぼくの粗削りな部分は多かったと思いますが、率直なところを、気合入れてお伝えしてきました!
とても幸運だったのは、教員勤務実態調査を担当している課の方や、教職員の処遇関係を所掌する課、業務改善を推進している課、教育課程課、部活動に関係する課、ICT教育を担当する課などなど、関係者が一堂に集まっていたことです。
ぼくの資料は下記のスライドシェアにて公開しました。
ぜひまたご意見等いただき、ブラッシュアップしていきたいですし、国はもちろん、教育委員会、学校などとも組んで、活動していきたいです。ぼくは評論家ではありませんので、実行を支援、伴走してなんぼと思っています。
下記にとくにお伝えしたかったことを書きます。スライドシェアと一緒にざっとお読みいただけると、嬉しいです。
- 報道されているとおり、過労死ラインを超えて働いている教員は非常に多い。しかも、調査結果を平均だけで見ると誤解する。個別に見ると、月残業が200時間超えなどもいる。電通のケースが月130時間残業と言われているので、学校はもっと深刻だ。
- 小中の議論になりがちだが、高校の多忙も無視できない。また人により、比較的残業の長い人、それほどでもない人、差が大きいことも認識しておくべきだ。
- 直近の勤務実態調査の10年前、2006年時点から、学校が多忙なことと、休憩もとれないほど過密労働であることは明らかであった。この10年国等はどうしていたのか、と言われても仕方がないのでは?
- 下記の資料のとおり、他の業界と比べても、学校のブラックさは異常である。国も、教育委員会も、学校長も、もっと危機感をもつべきだ。
※データには注意が必要で、調査の方法やサンプリングの違いはあるので、一概に他業界と小中学校を比較はできない。なお、労働力調査の学校教育には小中も含まれるが、幼稚園、認定こども園、高校、専門学校、高等教育機関等も含まれるので、参考値。
- よく多忙化対策というと、学校では、ノー会議デイや会議の効率化の話が出てくる。これも大事だが、それだけでは到底この労働環境の過酷さは解消しない。
- やはり大きなところ(時間がかかっている)ところを見直していくことを考えるべきだ。具体的には、授業、授業準備、生徒指導・集団(給食、清掃等)、部活動、成績処理などだ。現場の先生の多くは、これらは子どもたちのために時間がかかっても仕方ないと思い込んでいる。本当に見直せる余地はないのだろうか?
- 学校には大きく2タイプいる。忙してもモチベーションが高い人。この人たちは好きで多忙になっているところもあり、ポジティブだが、その分、歯止めがかかりにくいので、過労死など注意が必要だ。もうひとつは、モチベーションが下がっている人。この人には早期退職してしまうなど別のリスクがある。
- 一生懸命やっているから、忙しても仕方がない、ではいけない。自己研鑽が細るなど、長時間労働の負の影響をしっかり見るべきだ。
- では、どうするか。下記の3点は基本的な考え方として共有したい。
- 学校には大事なことが多い。それはよく分かる。しかし、スクラップ&ビルドなく、ビルド&ビルドだけでは多忙化は加速する。では、どうやってやるべきことを重点化するのか。それは、課題の重点化から始めるべきだ。
- 下記のように、狭い意味での業務改善、方法改善では限界がある。仕分けと精選も進めないといけないが、それは学校の課題とビジョンを基準にするしかない。
- 文科省の方なら釈迦に説法だが、少子化の影響で児童生徒数は大きく減っているものの、教員数はそう減っていない。にもかかわらず、多忙な学校の実態は悪化している。ということは、必ずしも、定数改善(=教員数の増加)だけでは問題は解決しない、ということを示唆している。
- とはいえ、これまで紹介した現状の問題を考えると、定数改善も求めたい。ただし、これまでの文科省の要求のように、35人の少人数学級にするための定数改善を求めたいのではない。先生たちが人間らしく働ける場として、労務環境改善としての定数増だ。この観点でぜひ厚労省と組んで、財務省と戦ってほしい。
- 同時に、教員数増だけを考えていたのでもダメだと思う。教員がやらなくていいものはアシスタントさんにやってもらうことも拡充したい。実際先行事例では効果が出ている。
- とはいえ、これもアシスタントを設置すればいい、という単純なものではない。人に頼るのが苦手な教師に働きかけるなど、職員室のコーディネーターが必要だ。この役割は、日ごろから教員と協力して日常業務をしてきた、事務職員のほうが向いていることが多い。そういった意味で事務職員の活躍を増やしたい。
- また、小学校は10教科前後もひとりの学級担任がこなすのは、授業準備からして無理がある。現場では、流す授業になってしまう、という声もある。教科担任制までできなくても、複数教科の担当とするなど、もっと分担できるようにしてほしいし、小中高とも、一人当たりの週のコマ数も抑制するように、国は働きかけてほしい。
- 繰り返すが、定数改善だけが国の役割ではない。学習指導要領は優先度の高いものもリスクだが、逆に優先度が低いものはどうしていくかのガイドもほしい。たとえば、給食は本当に担任がずっと面倒を見ないといけないのだろうか?
- 処遇・制度面では、教員調整額という残業代の代わりは、1966年に実施された調査をもとにしている。これはビートルズが武道館でコンサートした年で、ぼくの親父の青春のときだ。そのときから変更がないのは、やはりおかしい。
- 採点、添削も多くの小学校教員らが自宅残業までしてこなしている。これは、パソコンやAIでもっとできる領域のはず。次世代学校というなら、そのへんにも投資してほしい。これは児童生徒の個別の進捗に応じた教育にもなる。
- ICTやネットを使うのと、リアルな場での対話等は、両方必要であり、ブレンドすること。
- 現場の先生は、声をあげたくても、なかなか安心して届けるところがない。これも大きな問題だ。管理職育成のためにも、現場の声を管理職や教委に伝えるフィードバックの仕組みも考えたい。以上、7点を重点として提案する。
★きょうはここまで。以前もシェアしましたが、下記の新聞記事も関連したことを書いていますので、よかったら、御覧ください★
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