妹尾昌俊アイデアノート

妹尾昌俊アイデアノート~ステキな学校、地域、そして人たち

元気な学校づくりと地域づくりのヒントをお届けします!

新刊『「忙しいのは当たり前」への挑戦』のあとがき

みなさん、こんにちは!このブログもとっても不定期更新となっておりますが、お知らせです。新刊が出ました。正確に言うと、今月2冊出ます。

じゃじゃん、第一弾は、『こうすれば、学校は変わる! 「忙しいのは当たり前」への挑戦』です。

 

f:id:senoom:20190614182530j:plain

八重洲ブックセンターで置いてくださっていました!

学校の働き方改革や業務改善について、みなさんの学校では進んでいますか?

 

  • 「いやー、掛け声だけだよね」というところ。
  • 「早く帰れ」とだけ言われたって、仕事が減らないんじゃ、どうしようもないじゃない、という声。
  • 部活動や行事をめぐっては、いろんな意見が職員のなかでも、保護者のあいだでもあって、どうしたらよいか困っているという学校。

などありますよね。

 

本書では、こうしたみなさんのギモンや悩みを踏まえながら、陥りがちなまちがい(失敗と言うと言い過ぎですが)を避けて、効果のある働き方見直しを進めるための5原則を、とにかく具体的に解説しています。

 

★出版記念のトークセッション(セミナー)もやります。7月6日夕方@八重洲ブックセンター

校則ゼロにしたことで有名な世田谷区立桜丘中学校の西郷校長先生をゲストに、学校は、教師は、真にどんなことに時間とエネルギーをさいていくべきか、深掘りますよ~。

(詳細、お申し込みはこちら)

https://www.kyouiku-kaihatu.co.jp/camp/talkevent.html

 

★★★

きょうは、このブログで、本書のあとがきを公開します。

”あとがき”って最後に読むものじゃないか?と思われている方、

 

はい、ふつうはそうなんですが、あとがきから読むという読書法もあります。あとがきに、その人が言いたいことがまとまっているという場合もありますし。あるいは、執筆の動機とか。

 

なので、もしよかったらご参考になればと思い、アップしてみました。

こうすれば、学校は変わる!  「忙しいのは当たり前」への挑戦

こうすれば、学校は変わる! 「忙しいのは当たり前」への挑戦

 

 

 

・・・あとがき・・・

 

 「なぜ、妹尾さんは、働き方改革や学校改善に、これほどアツく取り組んでいるんですか?」

 

 各地で講演・研修などをしていると、時よりこんな質問をいただきます。理由は、大きなところでは3つでしょうか。

 

 ひとつは、熱心な先生の過労死に接したからです。2011年には堺市立中学校に勤務する26歳の前田大仁さんが亡くなっています。教科指導も部活動も熱心で、生徒からもとても慕われていた、2年目の若すぎる過労死でした。

 

 「主人が亡くなったときは10歳だった次女が、もう20歳。これからはお父さんのいない月日のほうが長くなります。」一昨年そう話してくださったのは、工藤祥子さん。横浜市の中学校教師(保健体育)だった義男さんは修学旅行の引率後に体調が悪化し、亡くなりました。40歳。前任校では⽣徒指導専任と学年主任を兼務し、かつ授業数も規定の上限より多く、進路指導やサッカー部の顧問も担うなど、とても“専任”とは言えない多重な多忙のなかにいました。

 

 いくら児童生徒思いだからといって、命を縮めるほどの多種で大量の仕事を強いるべきではないし、このような献身的な教師の過労死は二度と起きてほしくない。そう多くの人が共感されると思います。ですが、上記も含め、教師の過労死や過労自殺があっても、検証報告書らしいものはなにも出ないし、再発防止に向けた施策が自治体等を越えて共有されたという形跡もありません。そして、似た事案がそのあとも実際に起きています。

 

 これはどう考えてもオカシイ。そう感じたのが、ぼくが、教師経験もなく、教育行政関係者でもない、ヨソモノであるにもかかわらず、働き方改革に本格的に取り組むようになったきっかけです。

 

 ふたつ目は、全国各地にとてもいい先生が多いことを知っているからです。ぼくが中高生だった頃の恩師もそうでしたし、仕事を通じて、ありがたいことに、ステキな先生たちと多く出会いました。ママ友、パパ友でもある、同じ年の小学校教諭は、三人の娘さんを寝かしつけたあと、朝4時に起きて授業準備などをこなしています。ですが、ひとつ目と重なりますが、こうした友人たちも“死と隣り合わせ”の現場にいるのです。これはなんとかしたい、自分のできることはしたい、という気持ちで活動しています。

 

 3つ目は、約3年前からぼく自身が脱サラして、比較的自由がきく仕事にライフシフトをして挑戦中であることも影響しています。まだまだ試行錯誤なところはありますが、自分の好きなこと、真に重要と思うことに人生の多くの時間を振り向けられるようになりました。間違いなく、自分や家族の幸福度は高まったと思います。

 

 ついでに申し上げると、働き方改革の成果指標は、時間外月80時間(あるいは45時間)超えの割合とか、残業時間の平均値などとしている自治体が多いのですが、それらに依拠しすぎるのは考えものです。そうした数字のモニタリングは重要ですが、本質的には何がもっと大事かを繰り返し問い直し、共有していかないと、「残業時間が減りさえすればいいのね」と短絡的に考える人も忙しい現場では多くいます。原則月45時間・年間360時間というガイドラインができて、その懸念は強まる一方です。既に虚偽申告や過少申告が横行している地域もあります。

 

 「教職員が幸せを感じて、イキイキと働けているか」どうか、「この仕事を自分の子どもや甥っ子、姪っ子らに自信をもって勧めたいか」、「育児や介護、病気を抱えても無理なく続けられると思うか」、「自分のクリエイティビティや思考力を高める時間も取れているか」といった指標でもいいのではないかと思います。本書で「Why働き方改革?」という点を考えてきたこと(第2章)とも重なる話です。

 

 話を戻しますね。エラそうなことを言うつもりはないのですが、ぼく自身の生き方をとおして、出口治明さんの提案する「本、旅、人」から学び続ける人生は、とても面白いと実感しています(第5章)。

 

 時間どろぼうの“灰色の男たち”に人生をゆだねるのではなく、自分の時間を取り戻すこと。あれもこれもという発想ではなく、ある程度真に重要なことを選択した上で、時間対効果を高めて仕事を進めることは、自分とまわりの幸せにもつながります。このことは、自信をもっておススメできます。

 

 教師の仕事の多くは、授業準備などを典型として、どこまでいっても百点にならず、キリがない性質をもっていますし、プライベートでの活動や自己研鑽などと仕事を完全に区別するのは難しい場面も多くあります(専門家は無限定性、無境界性などと呼んでいます)。ぼくにとっては講演の準備や本の執筆なども似ています。映画を観ても、ディズニーランドに行っても、「これは今度研修のネタに使えるな」とか考えていますから。ですが、だからといって、どこまでもズブズブやっても、いいものはできませんし、疲れを溜めるよりは、(いいアイデアが浮かばないか、考え続けることはしながらも)リフレッシュしたり、本・旅・人などで視野を広めたりしたりしたほうが、結果的にはアウトプットはよくなると感じます。

 

 AI時代に、子どもたちにクリエイティビティや問題解決力などが重要となっているなか、ぼくは、日本中の先生たちにもクリエイティブな時間を楽しんでほしいと感じています。

 以上が、ぼくが働き方改革に本気で取り組む理由です。

 

 How about you? みなさんはガチで取り組んでいますか?

 

 

 「学校現場は絞りきった雑巾のようです。国のほうでもっと教員数を増やしてくれないと、ムリですよ。」

 

 これも、講演などのとき、しょっちゅうお聞きします。

 ぼくも、とりわけ小学校においては、教員数はもっと必要だと強く感じています。トイレに行く暇もないほど、休憩も取れないというのは人間的な労働環境とは言えません。また、教員定数の決め方は、小学校は学級担任制を前提としているため、中学校や高校と比べて著しく不利で、級外(担任をもたない人)が多く出ない計算式になっています。これでは有給休暇や病休も取りづらく、よほどしんどくなってからしか休まないという人が多くいます(自分が休むと代わりがおらず、自習等になることも多いので)。

 

 では中高と比べて、小学校の先生がラクかと言えば、まったくそんなことはなく、「どうして雨は降るの?」、「どうして分数の割り算は逆さまに掛けるの?」という子どもたちの素朴な疑問に答えていく仕事です。しかも8教科、9教科など準備。加えて、家庭の貧困問題や発達障がい、外国にゆかりのある子等も増えて、福祉的な配慮やきめ細かな教育的支援が必要な子も大勢います。さらには、新採で3日目、4日目から学級担任をする人がほとんどです。

 

 財政制約が厳しいことも承知していますが、小学校の教員定数の決め方は根本から見直すべきだと思っています。

 ですが、同時に、とても気になることがあります。国がやってくれないと、と言う人の多くには、「教員数が増えないうちは、学校や市区町村(または都道府県等の)単位では、たいしたことはできない」と思い込んでいるか、あきらめているふしがあります。本書の各章で述べたとおり、そんなことはなく、学校や地域で進めていけることも多いです。絞りきった雑巾のようという気持ちはわかりますし、これまで学校現場にビルド&ビルドで負担を増やし続けてきた文科省教育委員会は猛省してほしいと思いますが、主体性も問題解決力もない態度を教師が続けていては、多少教員数が増えても、業務量や残業はたいして減らない事態になるでしょう。

 

 また、何かしら働き方改革や業務改善に着手しても、いわば、あさってな方向に動いていたり、道に迷ったりしている学校も少なくないことをぼくは見てきました。冒頭で述べた、5つの大まちがいはその典型例です。

 

 そこで、本書では、働き方改革を進める上で“地図”や“ガイド役”となりたいと考え、5つの原則とそれに紐付く具体策を提案しました。この5原則は、特段派手ではないし、読者のみなさんにとっては「当たり前」のことを述べているだけと感じるかもしれません。しかし、「忙しいのは当たり前」という学校を変えていくためには、「当たり前」に見えることを真面目に着実に進ちょくさせていくしかないのです。ぜひ各校等においては、「Why 働き方改革?」という理念、目標を十二分に共有したうえで、多忙の内訳を分析して、重点的に取り組むべきことを決め、工程表にするなどして、具体的に落とし込んでほしいと思います。

 

 本書の内容には、国の審議会や各実践地域・学校で伺ったことや議論したこと、教育関係者らと楽しく飲みながら考えたこと、ぼくの趣味や育児経験などがふんだんに活かされています。紙面の関係上、個人名はあげませんが、たくさんの人のおかげです。今後も進化・深化させたいと思いますので、引き続きよろしくお願いします。

 

 本書が「忙しいのは当たり前」という学校の慣性の法則へ、
 挑戦する一助となりますように。

 

          講演で関西に向かう新幹線のなかで 2019年5月

                            妹尾昌俊

 

・・・以上お知らせでした。写真は最近の著者です・・・

f:id:senoom:20190614182538j:plain

 

Amazonの学校運営で1位となりました★ 

予約、購入いただいたみなさん、ありがとうございます。忌憚なくご感想やレビューなどよろしくお願いします。ほかの既刊も引き続き応援よろしくお願いします。

こうすれば、学校は変わる!  「忙しいのは当たり前」への挑戦

こうすれば、学校は変わる! 「忙しいのは当たり前」への挑戦