(読書ノート)ヒストリエ
やっと出ました。岩明均さんの歴史マンガ「ヒストリエ」。1~2年に1巻しか出ないので、これを機に改めて1巻から読み返しました(最新刊は9)。読みごたえ十分な作品です。このままいくと、終わるまで何年かかるんだ!!という感じはしますが。。。
本書は、アレクサンドロス(アレキサンダー)大王の書記官エウメネスが主人公。アレクサンドロスではなく、その参謀(と言ったらよいのかな)を主人公にするところがまた面白いですね。日本でいうと、信長じゃなくて、太田牛一(信長の歴史を書いた人)を主人公にしたようなものなのかな?いや、王のブレーン的に描かれている部分もあり、秀吉でいうところの官兵衛に近いのかな?
ともかくも、超有名人物を一歩、二歩ひいた視点から見ることで、また味わい深くなっている気がします。しかも、エウメネスはマケドニア人から見れば、ヨソモノ、別の言い方をすると、蛮族(バルバロイ)出身なわけで。そんな彼がどう生きたのかは興味深いです。歴史好きでなくとも、人間ドラマとしても、かなり楽しめると思います。歴史が面白いときは、たいてい、人物が面白いです。
もちろん、マンガなのでフィクションは多いと思いますが、エウメネスは実在の人物ですし、プルタルコスの英雄伝にも載っています(僕は読んだことありません)。が、英雄伝も、エウメネスが活躍した時代のおよそ400年先ですから、どこまで当てになるのやら?ともかく、主役をはるに十分な魅力ある人物の一人であることは確かでしょう。
物語の舞台はマケドニア、ギリシア、ペルシアなど、今でいうアジアとヨーロッパをまたぐ世界です。先日トルコで遺跡めぐりした身としては、ヒストリエを読んでおいたので、旅が一層楽しくなった気がします(ビザンティオン=イスタンブールの話が出てきます)。
ときは紀元前4世紀のお話。あのアリストテレスも登場します、アレクサンドロスの先生でもありますから(これは史実)。ちなみに当時はローマは弱小だったので、今のところ無視されてます(もっとも、だいぶ後にマケドニアもギリシアも、ローマ帝国の一部に編入されてしまうところが、また歴史の面白いところ)。
本書をみて感じたのは、アレクサンドロスの父ちゃん、フィリッポスもスゴイこと。アレクサンドロスはこの父をどう見て、どう超えようとしていたのだろうか?なんかドラゴンボールじゃないけど、そんなテーマも少し感じました。
フィリッポスは、標準よりも相当長い槍での密集陣形、マケドニア式ファランクスを始めた人。日本の戦国時代でいうと、槍衾ってやつですかね?本書でもフィリッポス率いるマケドニアの強さが描かれています。
似た話が信長にもありますね(斉藤道三がうつけと言われていた婿、信長の長槍隊を見て、能力を見直したっていう話とか)。むしろ、マケドニアの話を信長が真似したのか、あるいは、信長の話をする人がファランクスの話からヒントを得て創作したのか?
でも、ちょっと考えたらわかるように、槍は長いほうが有利だよね~なんてことは誰でも考え付きます。戦争ですよ?ちょっとでも離れて戦いたいじゃないですか、フツー。だから、弓矢も大活躍したわけだけど。
フィリッポスも信長もエラカッタのは、長槍を使いこなせるように兵を十分に訓練したこと、またそうした武器の改良や訓練を可能とする経済力があったことでしょう。また、なにより組織的に、機動的に動けなければ槍隊の威力は出ませんから(槍衾は正面には強いが、側面には弱い)、そのへんの用兵と訓練もうまかったんだろうと思います。
企業の競合分析と同じで、なぜ他はできなくて、あるいは不徹底で、ここはよくできたのか、考えるといいと思います。
おっと、マンガから話題がそれてきました。でも、そんなことも考えながら読むと、マンガも歴史も10倍くらい面白くなると思うのは僕だけでしょうか?