妹尾昌俊アイデアノート

妹尾昌俊アイデアノート~ステキな学校、地域、そして人たち

元気な学校づくりと地域づくりのヒントをお届けします!

今更ながらドラッカーを読んでみたところ、けっこう面白い

タイトル通りですが、今更ながらP.ドラッカーの「マネジメント」(エッセンシャル版)を読んでいます。この手の本は、けっこう抽象的な部分もあるので、ある程度現場を経験したり、いろんな方の話を聞いたりした後で読んだほうが、実感・共感しやすいかもしれません。僕にとっては、行政機関や学校に関心があるので、「第2章 公的機関の成果」が大変印象的でした。

(引用)
公的機関は、企業と同じようにマネジメントすれば成果をあげられると、くどいほど言われてきた。これはまちがいである。・・・
公的機関不振の原因は、まさにそれが企業でないところにある。・・・公的機関に欠けているものは、成果であって効率ではない。効率によって成果を手にすることはできない。
(p44)

(雑感)
僕は前職のときコンサルティングや調査をしていましたが、公的機関は単純にはいかないことをたびたび痛感しました(まあ、企業経営でもそうでしょうが)。もちろん、経営学などの理論や企業等の実践がヒントになることは大変多いのも事実だし、民間の発想を含めて、新しい発想で考えて実践することも大事だろうと思います。

しかし、例えば、学校でも民間人校長になれば変わるかと言えば、物事、そう単純ではないですよね、当たり前ですけど。でも、どこか世間的には、民間人や(コンサルティング会社が勧めるような)民間の恰好よさげな手法(フレームワーク等)が入ると、期待するところがあります。期待するのはいいけれども、民間でうまくいったから、公的機関でもうまくいくだろうってわけにはいかないのが世の常。むしろ、予算の制約や公益的な理由から事業選択と集中をしにくい構造にあることなどを考えると、企業以上に、難しい局面もあることを前提に、どう民間の経験を活かしていくかを考えたほうがよいと思います。

このあたり、民間での経験を公的機関で発揮した例として、和田中学校の元校長代田明久さんの本が大変面白いです。
※以前感想を書いておきましたので、よかったら参照してください。→「校長という仕事」を読んで

それから、財政が厳しい昨今、行政改革≒コスト削減となっている例が少なくない中、また効率化が強く言われる中、「効率によって成果を手にすることはできない」との言葉は、ずしっときました。公的機関は自らの事業(ミッション)はなにかしっかり見定めて、具体的な目標をめざして成果をあげていくこと、その成果をめざす過程のひとつにコスト削減という手段もあるのかもしれませんね、そんな原点的なところにうまくバックさせてくれるのがこの本のよいところです。

(引用)
公的機関が成果をあげるうえで必要とするのは偉大な人物ではない。仕組みである。(p50)

(雑感)
これも、なんだ、ドラッカーって当たり前のことを言っているのね、って感じもしますが、けっこうびしっとくる一言。政治・行政でも、学校教育でも、世間的な期待としては、どこか閉塞感を断ち切るのに、リーダーを待望するところがありますよね。リーダーは必要なのでしょうが、その人頼みすぎても続かない。

僕は、よく「プロジェクトX型ではダメだ」と申し上げています。かなり前のNHK番組ですが、プロジェクトXでは、”そのとき○○は言った”といったナレーションが入って、キーパーソンやイノベーターがいかに事業を成功に導いたかが語られます。しかし、その人がいなかったらできなかった、続かなかったという事態でよいのでしょうか?あったほうがよいサービスや製品ではなく、なくてはならないサービスを扱うことが多い公的機関においては、特定の人頼みではやはり十分ではないだろうと思います。

公的機関では、企業以上に、成果の確認がはっきりしなかったり(成果がでるまでに時間がかかるケースも多いし)、予算が付かないと取組が進みにくいといった側面があります。そうした中ではなおさら、継続的に取組を発展させる仕組みが重要なことを感じます。同じ学校の例でいうと、和田中の初代民間人校長の藤原和博さんは、地域の人が学校に入って支援することを仕組み化したということを強調されています。彼のリーダーシップが強かったのは事実でしょうが、うまく継続的に発展させる仕組みを残したということが大きいのだろうと思います。

それにしても、さすがドラッカー、引用したくなる名言がたくさんありますね。また読んでみていいのを見つけたらシェアします。



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