妹尾昌俊アイデアノート

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妹尾昌俊アイデアノート~ステキな学校、地域、そして人たち

元気な学校づくりと地域づくりのヒントをお届けします!

国際教員指導環境調査を読んでみよう(3)

前回と前々回、国際教員指導環境調査(TALIS)の興味深いデータについて、少し紹介してきました。

◎前回までの記事はこちら

国際教員指導環境調査を読んでみよう(1)
国際教員指導環境調査を読んでみよう(2)

基本的には、日本のデータと参加国平均と比較して考察してみましたが、ちょっとひっかかるものがありました。

ひとつは、国によって相当学校や雇用に関する制度や慣習は異なること。もうひとつは、参加国平均ってのがどこまで参考になるんだ!?ってこと。後者については、OECD諸国をはじめとする多くの国の平均的な様子と比べるときには役立ちますが、この参加国の中には、学校教育のパフォーマンスが高い国もあれば、そうではない国も含まれます。

企業経営でも受験勉強でもそうですが、自分のめざす相手や競争相手と比べて考察するほうが有益なことは多いはず。そこで、学校教育のパフォーマンスというのは、様々な要素があるので、一概にどうかは評価できませんが、ひとつの目安として、やはり学力をとりあげたいと思います。それも、TALISと同じOECDが実施していて、15歳の学力を測っているPISAに注目します。

日本の教員の労働時間がダントツで長いことは各種報道されていますが、ライバル国と比べると、どのような特徴があるのでしょうか?次の表は、PISAの数学的リテラシーのスコアの順位順に並びかえてみたものです。※画像をクリックすると拡大します。


(出所)TALIS2013、PISA2012のデータより筆者作成


ちなみにPISAのこの年(2012)の数学の上位は、上海、シンガポール、香港、台湾、韓国、マカオ、日本の順。上海、香港などは国ではなく、都市と言えるでしょうし(台湾をどう理解するかは議論があるところですが)、TALISの調査にはこれらの都市は含まれていないので、それらを除くと、日本の7位は世界3位相当と言えます。また、アジアの国が上位を独占しているのも特徴的です。これは数学だけではなく、読解力と科学的リテラシーにおいても、上海などを含めるとトップ5はほぼアジア勢です。

もちろんPISA順位はあくまでも参考ですが、おおよその目安として、PISA数学14位のポーランドより上位国を日本にとっては同じく学校教育のパフォーマンスの高い国として、比較対象とみなしてよいのではないでしょうか。

そうすると、教員の時間の使い方については、次のことが見えてきます。

シンガポール、韓国、日本というアジアの上位国では、「授業の計画や準備」に比較的時間を使っている。一方、オランダ、エストニアフィンランドポーランドというヨーロッパの上位国では、
「授業の計画や準備」の時間は比較的少ない(参加国平均と比べても少ない)。

シンガポールでは、「生徒の課題の採点や添削」への時間が他の上位国と比べても、相当多い。宿題やテストをたくさん出す国なのでしょうか?

○日本の教員が外国と比べると「一般事務」(典型的なのは書類作成)に時間をとられているのは確かだが、アジア上位国もこの時間はかなり多い。一方、ヨーロッパ上位国はこの時間が少なく、教員のやる仕事と事務職員やスタッフ職の仕事が分業していることがうかがえる。

○「課外活動の指導」については、アジア上位国もヨーロッパ上位国も、日本ほどは時間を使っていない。課外活動を教員が担うことについては、日本の独自の文化なり慣習、伝統である可能性が高い。

○同じTALISの調査で測っている教員1人当たりの生徒数も参照すると、アジア上位国はヨーロッパ上位国と比べると、この値が多いが、中でも日本は多い。

○以上まとめると、シンガポールや韓国では比較的多くの生徒を相手としており、授業の準備に時間をかけている。同時に一般的な事務もかなりの量をこなしている。日本はこれらの国と時間の使い方の傾向は似ているが、これらの国よりも、教員1人あたりではさらに多くの生徒を抱えており、それとの見合いで考えると、授業の準備や生徒の課題の採点や添削には、必ずしも多くの時間を使っていると言えるわけではない。

○ここからは解釈、推察に過ぎないが、日本の教員がTALIS調査国と比べても、仕事への満足度や自己効力感が低いことを併せて考えると、日本の教員は、もっと授業の準備や課題の採点などのきめ細かな教育に時間を割きたいと思っているのかもしれない。

○一方、オランダ、エストニアフィンランドポーランドといったヨーロッパの国では、教員1人あたりの生徒数は少ないし、また、一般事務にもそう時間と取られることはないので、比較的”ゆとり”のある職場と言えそう。PISAの2012の結果ではアジア勢に負けているとはいえ、この”ゆとり”をどのような教育(例えば、生徒の好奇心や問題意識を高めるような工夫)や自己研さん等に活用しているのかは興味深いところ。