妹尾昌俊アイデアノート

妹尾昌俊アイデアノート~ステキな学校、地域、そして人たち

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校長先生!20時には帰ろう運動ではダメです!

みなさん、こんにちは。連日あちこちに講演、研修しております。

先日ある校長が、「職員には20時には帰るように呼びかけてます」とおっしゃっていました。この学校はいろいろよく頑張っている学校です。地域の伝統校であり、それがよくも悪くも仕事を増やしている部分もあるようです。一生懸命なのはよいことですが、「この呼びかけではダメです」とぼくは申し上げました。

 

理由はシンプルです。

学校の先生は、朝早い人が多いです。おそらく7:30前後には来ている人も多いでしょう。そうすると、19:30まで働いたとすると、12時間労働です。休憩時間は控除する必要がありますが、小中学校は実質まともな休憩は取れていないことが多いです。

別のある市のアンケート調査によると、完全な休憩時間をとれている(つまり、業務はおこなっていない)教員は小中ともに1%でした。多少とっていたとしても、この時点で、残業時間は約4時間ですね(12時間ー7時間45分なので)。

1か月の平日は何日あるでしょうか。だいたい20日~23日くらいです。

約4時間×約20日=約80時間/月の残業これですでに過労死ライン上です。

しかも、次のものを加える必要があります。

・自宅残業

・土日の出勤 

土日も部活指導に出かけたり、休日に静かな環境でまとめて仕事を片付けたいと出勤する人は多いですよね。

仮に土日のいずれかだけ、毎回3時間残業したとします。そうすると月12時間プラスです。仮に土日いつもとなると、月24時間となります(祝日は完全に休んだと仮定する)。

そうすると、先ほどの約80時間に12時間や24時間を足さないといけませんので、100時間前後です。これは7:30~19:30という時計の針が一周したケースでした。

仮に7:30~20:00とすると、4.5/日×約20日+土日の12~24時間=110時間前後となります。過労死イランを大幅にオーバーする水準です。

しかも、これで自宅残業はゼロだった場合です。

お分かりでしょうか?

たしかに今の小中学校にはすごく仕事が多いです。正直、負わされすぎていると思います。そのうえ、放っておくと、国や教委や社会はどんどん学校の仕事を増やす一方です。残念ながら、これまでの歴史がそれを証明しています(そのため、いまの中教審の働き方改革部会では、学校や教員の負担を減らすことを議論しています)。

そんななか、「20時には帰るように」という校長の呼びかけは、理解はできます。せめて20時にはという意味ですし、仕事多い中ありがとうだけど、という意味でもあります。

しかし、上記の簡単な計算でも明らかなように、この水準では過労死してもおかしくない負荷です。悪くとらえれば、本人にその意図は微塵もないのですが、「過労死するくらいの水準で働け」という、ブラックな呼びかけと言われても、反論できないと思います。

このあたりの業務時間と業務量の感覚を校長や教職員はもっておく必要があると思います。

多少残業するときがあっても自然でしょうが、やはり、多くの人が過労死ラインを超えるくらい働ないと回らない、という学校運営は異常です。

19時半や20時以降まで職員室に残っているのは当たり前、という学校も日本中にたくさんあることでしょう。また、「それくらい一生懸命やっているのが教師たるもの当然、よい教師だ」という職場の価値観、学校文化も強いと思います。しかし、それで倒れる人や病気になる人が続出するようでは、ダメですし、みなさん、学校の当たり前に毒されてます

長時間労働については、国や教委が仕事を増やしている責任も大いにありますが、部活動や学校行事、宿題・テストのチェックなど、学校ごとの裁量、教員ごとの裁量のなかで増やしているものもかなりあります。

※誤解のないように申し添えますが、ぼくは「忙しいのは、先生たち自身のせいだ」と言っているのではありません。が、「学校の経営判断や先生たちの判断で、自ら仕事を増やしてきている部分もあるよね、見直せることもあるよね」と言いたいのです。

「20時には帰ろう」ではなく、「18時には帰ろう」くらいで(それでも2時間の残業ですが。。。)、本腰を入れて大きく見直さないといけないと思います。

 

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※参加申し込みはウェブまたはメールで。

http://www.npofocas.org/

 

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多くの方にお読みいただき、ありがとうございます。

 

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