妹尾昌俊アイデアノート

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朝ドラ「とと姉ちゃん」の戦略論(2)戦略とやっていることの一貫性

前回の記事に続いて、朝ドラ「とと姉ちゃん」の舞台となっている「暮らしの手帖」のヒットの背景について、ちょっと考えてみたいと思います。

読者に真に役立つ雑誌になるための戦略眼

「暮らしの手帖」がベストセラーになり、現在まで半世紀以上発行し続けている背景、そこには、「生活を豊かにするために真に役立つ情報を届ける」というぶれない軸を感じます。でも、これは、なぜ、どのようにして可能となったのでしょうか?

大きく2つの鍵となる取組がありました。

ひとつは、広告を一切掲載せず、独立・中立の立場を貫いていること。

「暮らしの手帖」の代名詞とも言える企画が商品テスト。日用品や電化製品を効用、耐久性、安全性、使い勝手などさまざまな角度からテストし、どこの商品がおススメか紹介する特集です。トースターの試験のために4万3千枚を超える食パンを焼いて1年間の耐久性を試したり、石油ストーブの安全性の試験では実際の一軒家に家事を起こして検証したりと、常軌を逸したとも形容できる徹底ぶりです。

当然、どこかのスポンサーをえこひいきするような記事があってはならないし、特定の企業からの影響を排除したい。そこで広告は一切なしで運営しています。

しかし、広告がなく、収入がなければ手間のかかる長期の商品テストや高額な家電のテストなどはできません。ここの苦悩はドラマでもよく描かれていました。今でも、ほとんどの雑誌は実に広告が多い。それだけ重要な収入源ということです。「暮らしの手帖」は広告収入なしで、どうやってやっていけるのか、その様子はNPOなどで社会性と事業性をどうつくっていくかの苦労と重なるものを感じます。

 

そこで雑誌の売り上げを確保する必要があるのですが、もうひとつのポイントはそれに関わります。

「暮らしの手帖」では読者との交流を非常に大切にした運営を行っています。定期刊行でなかった時期が長かったこともあり、読者へ手紙を出し最新号の案内をすることはもちろんのこと、読者からエッセイなどを広く受け付けたり、読者モニターに商品テストの一部をお願いしたりするなど、読者との距離が近く、一定の定期購読者を確保することができていました。つまり、ファンを囲い込むわけですが、ファンは読むだけのファンではなく、紙面づくりに参加するファンでもあるわけです。

キラーパスをつなぐ

「暮らしの手帖」の戦略を図示すると、次のように整理できると思います。

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ここでのポイントは、「暮らしの手帖」がやっていることは一貫している、取組がバラバラではなく、つながっている、ということです。なんだ、そんなことか、と思われるかもしれませんが、「言うは易し、行うは難し」の典型が、ごく当たり前に見える戦略の一貫性ということ。

広告収入なしにすると、一見、事業の継続は厳しくなる。実際、倒産しかけたという話はドラマでも出てきました。しかし、広告をとらない、一貫して読者目線で記事をつくるという姿勢がファンを増やす。しかも、愛読者との交流を非常に丁寧にやる。だから、売り上げが確保され、伸びる。そのために、広告なしでやっていける、という流れになっています。

言い方をかえると、「キラーパスをつなぐ」。事業を継続・拡大させるうえで、クリティカルな取組をうまくつないで、いろいろな試行錯誤、修正は加えていくけれども、軸はぶらさない。

このあたりの、戦略の一貫性(太さと言ってもよいかも)、キラーパスをつなぐうまさは、歴史上の人物を見ていても、感じます。ダントツは信長じゃないかと思いますが、その話は関連記事に。

学校でやっていることは、ちゃんとつながっているか

『変わる学校、変わらない学校』でも書きましたが、学校運営・マネジメントを見ていると、もったいなと思うのが、この一貫性についてです。授業づくり、授業改善、生徒指導、進路指導、キャリア教育などなどが、バラバラに取り組まれていて、相互の関係性やつながりを意識している人が少ない、と思う学校はけっこうあります。

反対に、この学校は教職員に活気があって、うまく成果につながる取組をいろいろ改善しながらやっているな、という学校では、ビジョンから戦略、取組の一貫性を感じるところが多い。

〇〇教育など、学校に期待されることがどんどん積みあがっている現状では、学校現場ばかりに非があるわけではありません。とはいえ、前回の記事、そもそも論を大事に、ということとも関係しますが、どんなことのために、何をやり、その取組がどうつながるか、をよく設計して、試して、修正しながら行動することが大事になるのではないでしょうか?

また、重点課題が見えていない、あるいは教職員の間で十分共有されていないために、キラーパスが何かがわからない、という例にもよく出会います。1枚できれいにまとめる必要は必ずしもありませんが、「暮らしの手帖」で図示したように、どんなことがどうつながるか、課題とどう対応するかを一度整理してみたいですね。

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