学校教育に携わる多くの方に真っ先におススメしたい
最近ほんといい本がたっくさん出ていますが、現役の教職員の方や学校を応援したいと関心のある方に真っ先におススメしたいものと言えば、『まんがで知る教師の学び』です。本書は、小学校を舞台に、教師が先輩や同僚、子供たちから学び、成長していく物語がまんがを通じて語られます。リフレクションを通じた自己改善、授業観を磨くこと、タイムマネジメント、教師の未来設計など、大切な考え方を物語の中でとても具体的に考えることができます。
昨日は著者の前田康裕先生のセミナーに参加してきました。前田先生は現役の教頭先生で、聞けば、約30年の教師人生の中で様々な試行錯誤、そして時として挫折もあって本書が出来上がったそうです。やはり、現場経験、実践知豊富な方が書く本はリアリティが違います。前田先生自身、本書の主人公の吉良先生のような凄腕の教師なのですが、本書は、”この人だからできるだよね”というものではありません。読者の先生や学校でも参考にして行動していけるような分かりやすさがあります。
学び合う教室の背景には意図と巧みなしかけがある
もう少し具体的に見ていきましょう。次は、僕が好きなシーンのひとつです。子供たちが前の授業で学んだことを自己評価カードに書いてきて、どんなことを書いたのか、教室で共有する場面。これには、どんな意味があるのか?ということが語られるシーンです。
佐藤学先生の本、実践にもありますように、「学びの共同体」としての教室のヒントがこのワンシーンにもたくさんあるように思います。女性の夏村先生が思っているように、学び合いは、たとえば3人グループで話し合いましょうといった形態を真似するだけでは十分ではないな、と考えさせられます。
児童のグループ学習(協働学習、協同学習)でも、難易度の高いと思う課題を与えたほうがよいと、前田先生はセミナーで話されていました。簡単な課題の場合、グループの中で、教える子、教えられる子という関係になってしまい、どの子の頭もフル回転するというふうにはならないからです。どの子も必死になって考えないとできないような課題がよいとおっしゃっていたのには、なるほどと思いつつ、そうした課題(発問)を設定する準備が大切だなと感じました。
授業研究や視察でも、形のところを質問するのも悪いわけではないと思いますが、なぜそうしているのか、どんな意図があるのか、そしてその意図はなぜうまくいったのか(orうまくいかなったときはなぜなのか)などを深堀りたいものですね。
ここでも登場する自己評価カードについて、セミナーはより詳しいお話が聞けました。次の写真は実際の例。ポイントは、この授業で何をしたかを書くのではなく、「どんなことを学んだか」を書くということです。振り返り、書くことで学習内容の定着と思考力を高まるという仕掛けです。☆印のところは、次の授業で発表してもらい、他の児童とも共有します。
そして、注目は、先生からという欄。当初はすべて手書きのコメントをしていたそうですが、それだとほんと大変。そこで、チェックをするかたちに変えたそうです。このあたりの工夫も、さすがです。次の写真は、前田先生と、自己評価カードで評価するポイントの解説。
理論と実践の架け橋
本書では、前田先生がご自身の経験から学んだことを惜しげなく公開してくれていますが、実践だけではなく、学術的な成果や理論、またビジネス書などからの知見もふんだんに活用しているという点でも特徴的です。いわば、理論を実践経験をもとに翻訳してくれています。このあたりの思いと姿勢は、僕自身も本を書くときに目指したこととも一致して、先生の話を聞きながら、勝手に「わわ、同志だ~」と感激していました。
懇親会でも先生とお話でき、今後いろいろコラボできる研修(学びの場づくり)の企画も練っていこうと思います。read for actionで、これからも楽しみです。
◎セミナーの様子は、横山先生のブログも
前田康裕先生のセミナーは実に良かった! | \横山験也のちょっと一休み/