妹尾昌俊アイデアノート

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部活は学校の業務なのか??

中教審での学校の働き方改革についての議論がひとつの山場を迎えています。もうすぐ中教審の中間まとめも確定版になる予定です。この中間まとめでは、これまで学校が担ってきた仕事や、教師がやって当たり前だった業務について、

  • 必ずしも学校や教師が担う必要がないこともありますよ
  • 実際、法令上も縛りは少ないですよ(=教委や学校ごとの裁量ですよ)
  • 今後はこういう方針で考え直してはいかがでしょうか
    といった内容を多く含んでいます。

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たとえば、運動会の準備や当日に何時間くらいかけるか、とか、掃除の時間は毎日設けるかなど。これらは学校裁量です。文科省は、法律や学習指導要領などでほとんど規制しておりません。そういうことも、言うまでもないことも多いかもしれませんけれど、中教審の審議のなかでひとつひとつ確認していきました。

国が大いに反省しないといけないことや支援が必要なことも多いのは確かです。一方で、学校の裁量や前例、慣習のなかで仕事を増やしてきた部分への反省も同時に必要だと思います。

中教審の議論についての報道では、教師の残業時間に上限目標を定めることを検討するとか、部活のあり方についての話題が多く見られます。それらもすごく大事なことですが、学校の働き方改革は、それらだけでは決してないです。

ページ数がそれなりにありますから、忙しい学校現場の先生たちや、教育行政の担当の方にすべて入念に読め、と言うのは気がひけますが、ぜひどこかで、ざっとでもご覧いただければ、ぼくの言っていることがご理解いただけると思います。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/079/index.htm

 

さて、この中間まとめの当初案で、ネット上等で大きく話題になったことがあります。それは、学校における部活動の位置づけについてです。11月28日の当初案では、「部活動については学校の業務と位置付けられ,現状では,教師が担わざるを得ない状況である」との表現となっていました。これが、先日の12月12日バージョンでは、同じ箇所について「各学校が部活動を設置・運営することは法令上の義務とはされていないが,現状では,ほとんどの中学校及び高等学校において部活動が設置され,教師が顧問を担わざるを得ない状況である。」との修正がなされました。

ただし、「部活動については,学校の判断により実施しない場合もあり得るが,実施する場合には,学校教育の一環であることから,学校の業務として行うこととなる。」との言及は別の箇所で残っています。

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こうした部活動の位置づけについて、現教審(現職教員等から構成された会議)などをリードされている先生たちのなかには、「部活を学校の業務として位置づけるのは、怒りすら感じる。これが大義名分となって、校長のなかには、顧問をやりたくない人にも押しつけようとする。そこを危惧する」とおっしゃっています。

この心配は、これまで、少なくない学校で、部活動顧問を強要してきた歴史からすると、しごくまっとうな反応だと思います。ぼくもそこは心配だったので、次の意見出しをしました。

「部活動については学校の業務と位置づけられ」と書かれていますが、誤解を招く表現であり、修正したほうがよいと思います。典型的な誤解は、学校がやらねばならない業務、必須の業務とこれを読んで解釈する人がいます
指導要領上、教育課程外なのですし、生徒の自主的活動なのですから、学校が部活動を行うことはどこも強制していないことを、この中間まとめでも確認することが必要だと思います。

ぼくの意見が少しは反映されたのか、あるいはネット等での現職の先生たちの叫びが影響したのかは知りませんが、修正案では、部活は必須の義務ではない、ということが確認される文言となりました。でも、「部活=必須じゃないけど、やるなら学校業務だよ」という位置づけは明記されたわけです。

これは、いったい、どういう意味なのでしょうか?

ややこしいのですが、「業務」という言葉の定義を確認しないと、誤解を招きます

「学校の業務=学校が担わねばならない義務的なこと、必須のこと」と定義するなら、部活は学校の業務ではありません。しかし、中教審の中間まとめでは、この定義は採用していません。部会長や事務局にも確認しないといけませんので、あくまでも妹尾の個人的な見立てですが、おそらく、「学校の業務=学校の責任下で行う仕事(ただし、必須かどうかは問わない)」という意味でこの用語を使っています

部活は、指導要領上、教育課程外ですので、中教審の中間まとめで確認するまでもないことですが、もともと、必須や義務ではありません。生徒の自主的な活動なのですから、やりたい生徒が一定数いて、それに校長が賛同すれば、学校の責任と裁量で設置するものです。仮に必須のこととするなら、教育課程内に位置づけないと、いけません。

(写真:今日は新潟に行ってました。教頭研修です。)

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当然、顧問をすることを校長や教育委員会が強制することはできません。強制なら自主的な活動とはなりませんし、教育課程外なのですし、時間外勤務を認める超勤4項目(修学旅行や緊急時等に時間外勤務しろと命令できる項目)に部活は入っておりませんので。百歩ゆずって、勤務時間内なら校長が顧問やれと命令することは不可能ではありませんが。。。実際は勤務時間外に部活をするというのは、フツーなので、勤務時間内だけ部活動しろという命令が飛んでいる学校はほとんどないと思います。

それでですね、「学校の業務=学校の責任下で行う仕事(ただし、必須かどうかは問わない)」という定義をとるならば、ある学校でこの部活は学校教育の一環としてやりましょう、と決めたものは、明白に学校の業務です。

仮にですよ、部活=学校の業務外としてしまうと、次の大きな悪影響があります

  • 生徒の事故や怪我が起きたとき、学校の責任外となってしまう。そうすると、生徒(ないし家庭)からすると、学校の責任を問えなくなるかもしれない。
  • 教師が過労死したり、病気になったりしたとき、学校の業務外とされてしまうと、いわば、先生の趣味かボランティアでやっていたのね、となりますから、下手すると、公務災害(私立学校の場合は労災)と見なされないこととなってしまう。
  • 土日の部活動指導には、一定時間以上は特殊勤務手当のひとつとして、部活動手当が付いている地域がほとんどだが、業務外となると、税金を支出する根拠があやしくなる。教師の趣味に公金を使うわけにはいかんでしょ?

このように、部活=学校の業務外と見なしてしまうと、不都合も多いのです。

でもですよ、いまの部活の制度が矛盾だらけなのも確かです。

学校の業務として、つまり教師の趣味じゃない活動として、職務として部活指導をやっているのに、超勤4項目には該当しないのですから。同時に、完全に教師の自発的な活動やボランティアだとは見なせないところもある。

こういう点で、部活の現状の位置づけは、非常に中途半端というか、よくわからない制度と運用となっているわけです。
だからといって、超勤4項目に部活を追加したらよい、とは、ぼくは全く思っておりません。今後のあり方はよくよく考えていかないと、今のままではおかしいことや誤解が多いのです。
引き続き、こうした点をぼくは中教審スポーツ庁の審議会等で申し上げて、多くの方と検討していきます。

 

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